くまのこ3きょうだい ふねのきょうそう/中川ひろたか

『くまのこ3きょうだい ふねのきょうそう』(2020年 教育画劇)は、ふたごのくまたろう・くまのすけと末っ子まさおの仲良し3兄弟が主人公。森のなかで「ふねのきょうそう」をすることになり、それぞれが思い思いの素材でふねを作ります。木の枝、木の皮、葉っぱ――どのふねがいちばん早いかな?というワクワクの中で、ふねの行方だけでなく、三兄弟それぞれの個性や関係性も見えてきます。小さな冒険の中に、兄弟のやさしさや成長がぎゅっと詰まった、心あたたまる一冊です。表情豊かなくろくまたちの姿にも癒されます。

略歴

中川 ひろたか

中川ひろたかさんは1954年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、絵本作家、保育士などさまざまな顔を持つクリエイター。1995年に『さつまのおいも』でデビュー。また『ないた』で日本絵本賞受賞。モー・ウィレムズ作品をはじめ、翻訳絵本も多く手がけ、独自のユーモアある語り口が魅力。さらに作曲された『世界中のこどもたちが』などの歌が、保育現場でも広く親しまれています。

中川 貴雄(絵)

中川貴雄(なかがわ たかお)さんは1979年和歌山県御坊市生まれ。大阪デザイナー専門学校でイラストを学んだ後、2005年以降フリーランスとして活動をスタートし、2009年からはクリエイティブユニット「なりゆきサーカス」に参加。絵本作家としては「わすれんぼうのサンタクロース」(中川ひろたか作)でデビューし、『くいしんぼうのサンタクロース』『なんにでもレナール!』など教育画劇から多数刊行。2020年刊行『くまのこ3きょうだい ふねのきょうそう』では絵を担当し、中川ひろたかさんとの双子ならぬ“同姓・共作”絵本のタッグとして注目を集めました。現在は絵本制作のほか、展覧会やワークショップを通じて幅広く活動されています。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、2〜4歳くらいの幼児が中心です。シンプルで短い文章と、絵の表情やストーリーの流れが分かりやすく、まだ自分で読むのが難しい小さな子どもでも楽しめます。また兄弟で協力したり、一緒に遊ぶ楽しさがテーマなので、親子の読み聞かせにもぴったりです。

レビュー

この本は、ほんわか温かい森の雰囲気とともに、くま3兄弟の愛らしさに癒されます。木の枝、木の皮、葉っぱというそれぞれのふね選びから性格が伝わり、読みながら「どれが早いかな?」と自然に一緒に考えてしまいます。せーので流れ出すシーンはドキドキワクワク!最後にどのふねが一番だったかは明かされていないのがまたいい。競争よりも、“一緒に遊ぶ楽しさ”がメインだから、ほっこり優しい読後感があります。兄弟愛や遊びの想像力が育まれる一冊。繰り返し読みたくなる、心が温まる絵本です。