かわうそ3きょうだい/あべ 弘士

『かわうそ3きょうだい』(作・絵:あべ弘士、2009年 小峰書店)は、月のきれいな夜に川辺に現れる、元気いっぱいのかわうそ三兄弟のお話です。影のようにスッと現れた3匹は、次々に川へ飛び込んでいきます。泳いだり、潜ったり、はしゃいだりと、自由で生き生きとした姿が描かれ、読んでいるとまるで目の前でかわうそたちが遊んでいるような気分になります。作者のあべ弘士さんは、旭山動物園の飼育係を務めた経験があり、かわうそは特に好きな動物だそうです。その思いがあふれるような描写は、野生の動物たちの力強さとユーモラスな魅力を両立させています。

略歴

あべ 弘士

あべ 弘士(あべ ひろし)さんは1948年北海道旭川市生まれ。高校卒業後、旭山動物園の飼育員として25年間勤務し、その経験を活かして絵本作家へ転身。動物のリアルな描写や、力強くもやさしい絵が特徴で、『あらしのよるに』や『ゴリラにっき』など数々の作品を発表。1995年に『あらしのよるに』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。現在も北海道を拠点に、動物のいのちや自然をテーマに創作を続けています。

おすすめ対象年齢

対象年齢はおおむね2~5歳頃くらいがおすすめです。テンポよく展開するお話と、ダイナミックな絵が幼児にもわかりやすく、動物好きの子には特に喜ばれる内容です。かわうその動きや表情が生き生きと描かれているので、動物園や自然に興味を持つきっかけにもなります。読み聞かせにも、自分で読むのにもぴったりです。

レビュー

読んでいてまず心をつかまれるのは、かわうそ三兄弟の愛らしさとパワフルさです。月夜にぴょんと飛び出して川に飛び込む姿は、まるで子どもたちが水遊びを楽しんでいるようで、ページをめくるたびに笑顔になりました。あべ弘士さんの筆づかいは、リアルさと勢いが同居していて、動物の体の動きがしっかり伝わります。特に水の表現が美しく、透明感と流れの迫力が印象的でした。かわうそが「遊ぶ」存在であると同時に、自然の中でたくましく生きる動物であることも感じられる絵本です。読み聞かせすれば子どもはワクワク、大人も「動物っていいな」と改めて感じられると思います。