木村 研さん作、村上 康成さん絵の『999ひきのきょうだい』(1989年、ひさかたチャイルド)は、春の田んぼで繰り広げられる大冒険のお話。お母さんカエルが産んだ999個の卵のうち、998匹は元気に孵化したのに、1つだけなかなか割れないたまごが……。それはなんと一番最初に産まれたはずのお兄ちゃん!?ようやく孵化すると、そのお兄ちゃんはまだ生まれたばかりのおたまじゃくしで、手足の生えている弟たちと一緒にのんびり生活を始めることに。ところがある日、ヘビが現れて大ピンチ!998匹の弟たちとお兄ちゃん、力を合わせて立ち向かいます。ユーモラスで愛情あふれる物語に、村上さんの温かなイラストが彩りを添え、親子で春の自然と絆を感じられる一冊です。
略歴
木村 研
木村研(きむら けん)さんは、1949年、鳥取県生まれの児童文学作家で、手づくりおもちゃや遊びの研究家としても著名。漫画編集者を経て児童文学の世界へ。作家としては「999ひきのきょうだい」シリーズをはじめ、多くの子ども向け作品を発表し、日本児童文学者協会の理事も務めています。『999ひきのきょうだいのおひっこし』は2012年ドイツ児童文学賞にノミネートされ、さらに子どもたちが選ぶ「金の本の虫賞」を受賞。全国各地で絵本やおもちゃづくりの講師としても活躍中です。遊び心とユーモアにあふれた制作活動で、多くの親子に愛されています。
村上 康成(絵)
村上康成(むらかみやすなり)さんは1955年岐阜県生まれ。魚や森など自然をテーマにした作品が多く、「自然派アーティスト」としても知られます。代表作に『ピンクとスノーじいさん』や『なつのいけ』などがあり、1995年には『ようこそ森へ』でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞。中川ひろたかさんとのコンビでも多くの絵本を手がけ、子どもたちの成長や日常をやさしく描き出しています。個展や講演活動も精力的に行い、絵本の魅力を広げ続けています。
おすすめ対象年齢
対象年齢は、3歳〜小学校低学年くらいがぴったり。兄弟や大家族の結びつき、春の自然、そしてハプニングのあるお話が子どもたちの想像力を刺激します。絵もテンポよく、読み聞かせにも向いていて、自分で読む練習にも最適。しかけ要素もあり、親子で一緒に楽しめる内容です。
レビュー
読んでいると、春の田んぼやカエルたちのにぎやかな声が聞こえてきそうなほど、リアルに感じられる作品です。お兄ちゃんだけ孵化が遅れているという展開から始まり、最後までどんなことが起きるのかドキドキしながら読み進めました。弟たちがちゃんとお兄ちゃんを慕って協力する姿や、危機に立ち向かう勇気には自然と応援したくなります。しかけ絵本としても楽しく、子どもたちが次の展開を期待してページをめくる手が止まりません。村上さんの色彩豊かな絵は、999匹の姿をわかりやすく描いていて、視覚的にも楽しめます。春の象徴であるカエルと自然の描写が美しく、何度も読みたくなる一冊。