999ひきのきょうだいのおとうと/木村 研

木村研さん作、村上康成さん絵の『999ひきのきょうだいのおとうと』(2014年 ひさかたチャイルド)は、大人気シリーズのひとつ。春の池で、999ひきのおたまじゃくしたちがにぎやかに遊ぶ中、いちばん小さな子だけまだ足が生えていません。みんなに追いつこうと一生懸命だけど、成長はゆっくり。仲間が次々にカエルになっていく中で、取り残されたような寂しさや焦りを感じます。でも、そんな彼にも思いがけない出会いが……。やさしさと成長を描いた、心あたたまるお話です。

略歴

木村 研

木村研(きむら けん)さんは、1949年、鳥取県生まれの児童文学作家で、手づくりおもちゃや遊びの研究家としても著名。漫画編集者を経て児童文学の世界へ。作家としては「999ひきのきょうだい」シリーズをはじめ、多くの子ども向け作品を発表し、日本児童文学者協会の理事も務めています。『999ひきのきょうだいのおひっこし』は2012年ドイツ児童文学賞にノミネートされ、さらに子どもたちが選ぶ「金の本の虫賞」を受賞。全国各地で絵本やおもちゃづくりの講師としても活躍中です。遊び心とユーモアにあふれた制作活動で、多くの親子に愛されています。

村上 康成(絵)

村上康成(むらかみやすなり)さんは1955年岐阜県生まれ。魚や森など自然をテーマにした作品が多く、「自然派アーティスト」としても知られます。代表作に『ピンクとスノーじいさん』や『なつのいけ』などがあり、1995年には『ようこそ森へ』でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞。中川ひろたかさんとのコンビでも多くの絵本を手がけ、子どもたちの成長や日常をやさしく描き出しています。個展や講演活動も精力的に行い、絵本の魅力を広げ続けています。

おすすめ対象年齢

対象年齢は3歳から小学校低学年くらいまで。ゆっくり成長する子や、ちょっとマイペースな子にも優しく寄り添ってくれる内容です。読み聞かせにもぴったりで、兄弟の関係や「待つことの大切さ」を自然と感じられる、優しい視点の絵本です。

レビュー

シリーズならではの、にぎやかで温かい雰囲気はそのままに、今回はいちばん小さな弟のがんばりが胸を打ちます。成長のスピードは人それぞれ。でも、それをちゃんと見守ってくれる存在がいるというのは、大きな安心になりますね。読んでいるうちに、「大丈夫、君のペースでいいんだよ」と声をかけたくなるような優しい気持ちになります。兄弟愛や見守るまなざしがあふれる1冊です。