このあとどうしちゃおう/ヨシタケシンスケ

『このあと どうしちゃおう』は、ヨシタケシンスケさんによる2016年発行のユニークで心温まる絵本です。主人公の男の子が亡くなったおじいちゃんの遺品を見つけ、そこに「死んだ後どうなりたいか、どうしてほしいか」を描いたノートが残されていました。そのノートをきっかけに、男の子は自分なりに死後の世界について想像を膨らませていきます。本書は重いテーマを扱いながらも、ヨシタケさん特有のユーモアと柔らかいタッチのイラストで、子どもにも大人にも楽しめる内容に仕上がっています。「死」を前向きに捉え、家族や友人との思い出の大切さを再確認させてくれる1冊です。哲学的なテーマに触れつつ、日常にある優しさを再発見できる絵本として幅広い世代から支持されています。

略歴

ヨシタケシンスケ(本名:吉竹伸介)さんは、1973年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。筑波大学芸術専門学群を卒業。さらに、同大学大学院芸術研究科総合造形コース修士課程を修了しています。
2013年、初のオリジナル絵本『りんごかもしれない』を発表し、独特の視点とユーモラスな表現で注目を集めました。同作はMOE絵本屋さん大賞第1位や第61回産経児童出版文化賞美術賞を受賞しています。
その後も、『ぼくのニセモノをつくるには』、『もうぬげない』『このあとどうしちゃおう』など、次々と話題作を発表。特に『もうぬげない』は、2017年にボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ています。彼の作品は、日常の何気ない疑問や想像をユーモラスに描き、子どもから大人まで幅広い世代に共感されています。また、児童書の挿絵や装画、エッセイの執筆など、多岐にわたる分野で活躍しています。
2022年6月時点で、彼の絵本の累計発行部数は約600万部に達し、10か国以上で翻訳出版されています。2児の父でもあり、家族との日常から得られるインスピレーションが作品に反映されています。その独特の発想と温かみのある作風で、日本を代表する現代絵本作家としての地位を確立しています。

おすすめ対象年齢

『このあと どうしちゃおう』の対象年齢は主に小学校低学年から中学年(6歳~9歳程度)とされています。ただし、大人も楽しめる哲学的で深い内容を持つため、幅広い世代に適しています。死後の世界や家族の思い出などを扱っていますが、ヨシタケシンスケさん特有のユーモアと柔らかいイラストがテーマを親しみやすくしています。子どもが「死」について考え始めるタイミングや、大人が一緒に読みながら話題を共有するのにも適した1冊です。

レビュー

『このあと どうしちゃおう』は、死後の世界という重いテーマをユニークかつ温かく描いた素晴らしい絵本です。読んでいて感じたのは、死に対する不安や恐れを和らげ、自然に受け入れるきっかけを与えてくれるという点です。主人公の男の子が、おじいちゃんの遺品を通じて想像力を膨らませる場面は、読者にも「自分ならどう考えるだろう?」と問いかける力があります。特にヨシタケシンスケさん独特のユーモアや柔らかいイラストが、テーマの重さを感じさせない工夫になっていて、読後には心が軽くなるような感覚がありました。また、「死」を悲しみではなく前向きにとらえる視点が新鮮で、子どもにも優しく伝えられる点が印象的です。人生の大切さや家族との思い出を改めて考えさせられる1冊で、大人にも深く響く作品だと思います。

タイトルとURLをコピーしました