『くまさん くまさん なにみてるの?』は、ビル・マーチン(Bill Martin Jr.)が文を手がけ、エリック・カール(Eric Carle)が絵を描いたアメリカの絵本です。原作名は Brown Bear, Brown Bear, What Do You See? で、1967年にアメリカで初版が発行されました。日本語版は1984年発行です。この絵本は繰り返しのリズミカルな文章と、エリック・カールの鮮やかなコラージュ風イラストが特徴で、子どもたちの視覚的な感覚を刺激し、自然と色や動物を覚えられる構成になっています。登場する動物たちが次々と問いかけに答える展開は、親子で楽しめる対話形式としても優れています。
略歴
ビル・マーチン
ビル・マーチン・ジュニア(Bill Martin Jr.、本名:ウィリアム・アイヴァン・マーチン・ジュニア、1916 – 2004)は、アメリカ・カンザス州ハイアワサ出身の教育者であり、児童文学作家です。幼少期は読書に困難を抱えていましたが、カンザス州立師範大学(現エンポリア州立大学)で詩を暗唱することで読解力を向上させました。その後、ノースウェスタン大学で初等教育の博士号を取得し、教育者としての道を歩みました。第二次世界大戦中は陸軍航空隊で新聞編集者として従事し、1945年には兄のバーナードと共に最初の絵本『The Little Squeegy Bug』を出版しました。その後、エリック・カールとの共作『くまさん くまさん なにみてるの?』や、ジョン・アーチャンボルトとの共作『Chicka Chicka Boom Boom』など、300冊以上の児童書を手がけました。彼の作品はリズミカルな言葉遣いと繰り返しの構造で知られ、子どもたちの言語発達に大きな影響を与えました。
エリック・カール
エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。
1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。
おすすめ対象年齢
『くまさん くまさん なにみてるの?』の対象年齢は、2歳から5歳頃が最適とされています。特に、カラフルなイラストが乳幼児の視覚を刺激し、繰り返しのリズミカルな文章が言葉を覚え始めた子どもたちにぴったりです。さらに、親子の読み聞かせにも向いているため、読み手と一緒に動物の名前や色を学べるのもこの絵本の魅力です。
レビュー
『くまさん くまさん なにみてるの?』は、子どもの感覚を楽しませる絵本の典型例だと感じました。特にエリック・カールのコラージュイラストは、動物たちの形や色をわかりやすく表現しており、子どもたちの注意を引きつけます。また、文章の繰り返し構造が親しみやすく、初めての言葉や色を学ぶ乳幼児に適しているのも素晴らしい点です。読み聞かせを通じて、親子の時間が豊かになるのも魅力のひとつです。この作品は、シンプルでありながら奥深い教育的要素を持つ傑作だと感じました。繰り返し読むたびに新たな発見があり、長く愛される理由がよくわかります。