『おじいちゃんがおばけになったわけ』は、キム・フォップス・オーカソン作、エヴァ・エリクソン絵、菱木晃子訳によるデンマークの絵本で、原作名は『Da bedstefar blev et spøgelse』、発行年は2004年、発行国はデンマークです。日本語版は2005年に出版されました。物語は、エリックの大好きなおじいちゃんが突然亡くなり、しかし夜になるとおばけとなってエリックの前に現れるところから始まります。「この世に忘れ物があると、人はおばけになる」との『おばけの本』の記述に従い、エリックとおじいちゃんはその「忘れ物」を探し始めます。死というテーマをユーモアと温かみを持って描き、子どもたちに生と死について考える機会を提供する作品です。
略歴
キム・フォップス・オーカソン(Kim Fupz Aakeson)
キム・フォップス・オーカソン(Kim Fupz Aakeson、1958年生まれ)は、デンマーク・コペンハーゲン出身の作家、漫画家、イラストレーター、脚本家です。1982年に漫画を発表し、1984年には児童文学作家としてデビューしました。以降、映画やラジオドラマ、舞台の脚本、大人向けの小説など、多岐にわたる分野で活躍しています。児童書作家としては、1998年にオランダの銀のキス賞を受賞し、2001年にはドイツ児童文学賞にノミネート、2005年にはベルギーのBernard Versele賞を受賞するなど、国際的に高い評価を受けています。代表作には『おじいちゃんがおばけになったわけ』があり、デンマーク国内外で多くの読者に親しまれています。
エヴァ・エリクソン(絵)
エヴァ・エリクソン(Eva Eriksson、1949年生まれ)は、スウェーデンのイラストレーター、絵本作家であり、日本でも高い人気を誇ります。スウェーデン国立美術大学で学び、イラストレーターとしてのキャリアをスタート。温かみのある絵柄と繊細な表現で、多くの絵本や児童書の挿絵を手がけています。代表作には『おじいちゃんがおばけになったわけ』の挿絵などがあります。彼女の作品は、温かみのある絵柄と繊細な表現で、多くの読者に愛されています。また、1981年にはエルサ・ベスコフ賞を受賞し、2001年にはアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しています。彼女の作品は、子どもたちの日常や感情を丁寧に描き出し、読者に深い共感と温かさを提供しています。スウェーデン国内外で数々の賞を受賞し、幅広い読者層から愛されています。
菱木晃子(訳)
菱木晃子さん(ひしき あきらこ、1960年生まれ)は、東京都出身のスウェーデン語翻訳家で、北欧の児童文学を中心に多くの作品を日本に紹介しています。法学者でスウェーデン法の研究者であった父の影響で、幼少期からスウェーデン文化に親しみました。慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、同大学文学部英米文学科に学士入学し、文学の基礎を学びました。その後、スウェーデンのウプサラでスウェーデン語を学び、帰国後に翻訳活動を開始。1988年に『サーカスなんてやーめた!』(岩崎書店)で翻訳家デビューを果たしました。以降、『長くつ下のピッピ』や『ニルスのふしぎな旅』など、多数の北欧児童文学の翻訳を手がけています。2009年には、スウェーデン王国より北極星勲章を受章し、スウェーデン文化の普及に貢献したことが認められました。また、2012年にはNatur & Kultur翻訳者賞を受賞しています。現在も横浜市在住で、翻訳活動を続けています。
おすすめ対象年齢
『おじいちゃんがおばけになったわけ』は、出版社のおすすめ年齢として3歳から5歳以上とされていますが、内容の深さから小学校低学年(7歳)以上の子どもたちにも適しています。特に、家族の死や別れといったテーマに触れる機会として、小学校2~3年生向けの読み聞かせや授業での活用が推奨されています。また、大人が読んでも心に響く内容であり、親子で一緒に読み、話し合うことで、より深い理解と共感を得られる作品です。
レビュー
『おじいちゃんがおばけになったわけ』は、死という重いテーマを扱いながらも、ユーモアと温かさに満ちた作品です。おじいちゃんが「おばけ」として孫のエリックの前に現れる展開は、子どもたちにとって死を身近に感じ、理解する手助けとなります。エリックとおじいちゃんの対話を通じて、別れの悲しみだけでなく、思い出の大切さや心の中で生き続ける存在について考えさせられました。エヴァ・エリクソンの柔らかなイラストも物語に深みを与えており、読後には心地よい余韻が残ります。子どもだけでなく、大人にも響く普遍的なテーマを持つ絵本として、多くの人におすすめしたい一冊です。