
アン・グットマン作、ゲオルグ・ハレンスレーベン絵の『リサ れっしゃにのる』は、フランス語原作名 Lisa prend le train として2003年にフランスで初めて出版されました。日本語版も同年2003年に発行されています。この絵本は、大人気シリーズ「リサとガスパール」の一作で、旅の中でリサの姉が大切にしているビー玉をめぐり、小さなハプニングが起こります。乗客の足元などあちこちにころころ転がり、リサの子どもらしい純粋な視点が物語を彩ります。鮮やかな水彩画が列車の雰囲気を美しく描写しており、親子で楽しめる温かな一冊です。
略歴
アン・グットマン
アン・グットマン(Anne Gutman)は、1970年にフランス・パリで生まれた絵本作家です。小説家であった父親の影響を受け、幼少期から創作活動に興味を持ちました。デザイナーとして出版社で勤務していた際、画家のゲオルグ・ハレンスレーベンと出会い、結婚しました。夫の助言を受けて作家活動を本格化し、彼と共に絵本制作を開始しました。主に文章と装丁を担当し、1999年に「リサとガスパール」シリーズを発表しました。このシリーズは世界的なベストセラーとなり、続いてコアラの女の子を主人公とした「ペネロペ」シリーズも手がけました。「ペネロペ」シリーズは『うっかりペネロペ』としてアニメ化され、日本でも高い人気を博しています。アン・グットマンの独特の文体と感動的なストーリーテリングで、多くの読者に愛されています。彼女の作品は、世界中で翻訳され、多くの子どもたちに読み聞かせされています。
ゲオルク・ハレンスレーベン(絵)
ゲオルク・ハレンスレーベン(Georg Hallensleben)は、1958年にドイツのヴッパータルで生まれた絵本画家です。 幼少期から水彩画に親しみ、高校卒業後に絵本の挿絵の仕事を始めました。 その後、パリでデザイナーとして活動していたアン・グットマンと出会い、結婚。以降はアンと共に絵本制作を行い、主にイラストを担当しています。 代表作として、架空の動物を主人公にした「リサとガスパール」シリーズや、コアラの女の子が主人公の「ペネロペ」シリーズがあり、これらの作品は世界中で愛されています。
石津 ちひろ(訳)
石津ちひろ(いしづ ちひろ)は、1953年に愛媛県で生まれた詩人、絵本作家、翻訳家です。 早稲田大学文学部仏文科を卒業後、3年間フランスに滞在し、その後、絵本作家や翻訳家として活動を開始しました。 自身の作品としては、『なぞなぞのたび』(絵:荒井良二、フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞を受賞し、『あしたうちにねこがくるの』(絵:ささめやゆき、講談社)で日本絵本賞を受賞しています。 また、詩集『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞するなど、多方面で活躍しています。 翻訳家としては、「リサとガスパール」シリーズ(ブロンズ新社)など、多くの作品を手がけています。
おすすめ対象年齢
『リサ れっしゃにのる』の対象年齢は3歳から6歳程度が適しています。シンプルなストーリーと親しみやすいキャラクターが、幼児や小学校低学年の子どもにぴったりです。特に、列車や旅といった日常と冒険が交差するテーマは子どもの興味を引きやすく、読み聞かせにも最適です。また、鮮やかな水彩イラストが視覚的な楽しさを提供し、ストーリーに集中しやすくなっています。家族で一緒に楽しむことで、絵本を通じた心温まる時間を過ごせる一冊です。
レビュー
『リサ れっしゃにのる』は、リサとガスパールシリーズらしい温かみのある物語が魅力的です。列車の旅というシンプルな舞台設定ながらも、リサの個性が際立つエピソードが展開され、子どもの冒険心や自由な発想を感じさせます。特にビー玉を大事にするリサの行動には、幼い子どもの持ち物への特別な愛着がうまく表現されており、共感を呼びます。また、ゲオルグ・ハレンスレーベンの柔らかく温かい水彩画が、フランスの列車や風景をリアルに描き出し、読者を物語の世界に引き込みます。この作品は、子どもにとっては共感や発見を、大人にとってはノスタルジーや癒しを与える一冊です。親子で一緒に読む時間を特別なものにしてくれる素晴らしい絵本だと感じました。