『おたすけこびとのまいごさがし』は、なかがわちひろ作、コヨセ・ジュンジ絵による絵本で、2011年に徳間書店から発行されました。本作は「おたすけこびと」シリーズの第3作で、雨の日におばあさんからの依頼を受けた小人たちが、迷子の子猫を探し出し、救出する物語です。ショベルカーやブルドーザーなどの働く車を巧みに操る小人たちの活躍が描かれ、細部まで丁寧に描かれたイラストが魅力的です。子猫を助けるための小人たちのチームワークや優しさが伝わる心温まる作品となっています。
略歴
なかがわちひろ
なかがわちひろ(中川千尋)は、1958年に関東地方で生まれ、転勤族の家庭で育ちました。小学4年生の秋から中学3年生の秋まで仙台で過ごし、高校時代にはアメリカ・サンディエゴに1年間留学しました。東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業後、劇団テアトル・エコーの座付き翻訳者としてコメディの翻訳に従事しましたが、子どもの本に強い関心を抱き、福武書店児童書編集部での翻訳活動を開始しました。以降、児童文学の作家、画家、翻訳家として多彩な作品を手がけています。翻訳作品には『ふしぎをのせたアリエル号』や『ちいさなあなたへ』などがあり、創作絵本には『のはらひめ』や「おたすけこびと」シリーズなどがあります。受賞歴も豊富で、『どうぶつがすき』で日本絵本賞翻訳絵本賞、『天使のかいかた』で日本絵本賞読者賞、『かりんちゃんと十五人のおひなさま』で野間児童文芸賞を受賞しています。彼女の作品は、子どもの豊かな感性を育むものとして高く評価されています。
コヨセ・ジュンジ(絵)
コヨセ・ジュンジさんは、1949年生まれ、福岡県出身のイラストレーター・絵本画家です。セツ・モードセミナーを卒業後、雑誌『アン・アン』『オリーブ』『BMWバイクス』などでイラストレーションを手がけ、単行本の装丁や表紙画も担当されました。
絵本作家としては、なかがわちひろさん文の「おたすけこびと」シリーズのイラストを担当し、これが初の絵本作品となりました。このシリーズは、ショベルカーやブルドーザーなどの働く車とこびとたちが活躍するユニークな内容で、国内外で高い評価を受けています。特に、アメリカのホーンブック誌の2008年のベストブックスに選ばれました。他の作品には、『こうじのくるま』『まちのくるま』(WAVE出版)などがあり、精密な描写で知られています。ねじの1本まで描くことを信条としており、その緻密なイラストレーションが多くの読者に支持されています。また、2024年には射水市大島絵本館で原画展が開催されるなど、精力的に活動を続けておられます。コヨセさんの作品は、子どもから大人まで幅広い層に愛されており、その独特の世界観と精密なイラストレーションが魅力となっています。
おすすめ対象年齢
対象年齢については、3歳から6歳程度が推奨されています。物語の内容はシンプルでありながら、細部まで描かれたイラストや多彩な働く車の登場により、小さな子どもたちの興味を引く要素が満載です。また、文字数が少なく、親子で一緒に絵を見ながらお話を楽しむことができるため、読み聞かせにも適しています。特に、働く車や動物が好きな子どもたちにとって、興味深く楽しめる内容となっています。
レビュー
この絵本は、細部まで丁寧に描かれたイラストが印象的で、ページをめくるたびに新たな発見があります。小人たちのチームワークや、子猫を助けるための工夫が描かれており、読者に優しさや協力の大切さを伝えています。また、働く車が多数登場し、それらを巧みに操る小人たちの姿は、子どもたちの好奇心を刺激します。物語の展開もテンポよく進み、最後まで飽きずに楽しめる作品です。親子で一緒に読みながら、絵の細部を観察したり、物語の展開について話し合ったりすることで、より深い読書体験が得られるでしょう。