『ブレーメンのおんがくたい』は、グリム兄弟によるドイツの昔話を2012年に、いもとようこさんが絵と文を手がけた絵本です。原作は1819年にドイツで発表された「Die Bremer Stadtmusikanten」です。物語は、年老いて役に立たなくなったロバが、音楽隊に入るためブレーメンを目指す旅に出るところから始まります。途中で同じ境遇のイヌ、ネコ、オンドリと出会い、彼らも旅に加わります。旅の途中で見つけた泥棒の家で、知恵を絞って泥棒たちを追い出し、最終的にその家で幸せに暮らすことになります。いもとさんの温かみのある貼り絵が、物語の魅力を引き立てています。
略歴
グリム兄弟
グリム兄弟[ヤーコプ・グリム (Jakob Grimm) とヴィルヘルム・グリム (Wilhelm Grimm)]は、19世紀ドイツを代表する言語学者であり民俗学者です。彼らは1785年(ヤーコプ)と1786年(ヴィルヘルム)にドイツのハーナウに生まれ、マールブルク大学で法学を学ぶ中で民族文化や言語への関心を深めました。特に民間伝承や童話に強い興味を抱き、各地の口承文学を収集し、それを基にした『グリム童話集』を1812年に初めて出版しました。この作品は、単なる子供向けの物語ではなく、当時の民衆文化や価値観を反映した重要な文化遺産として高く評価されています。兄ヤーコプは特にドイツ語の文法研究や辞書編纂にも尽力し、弟ヴィルヘルムは物語の文体や編集に秀でていました。彼らの活動は、ドイツの統一と民族意識の高揚にも寄与しました。
彼らの作品には、『赤ずきん』や『おおかみと七ひきのこやぎ』、『ブレーメンのおんがくたい』、『こびとのくつや』、「シンデレラ」、「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」など、今日でも世界中で愛されている物語が多く含まれています。
いもとようこ
いもとようこさん(本名:井本蓉子)は、1944年兵庫県生まれの絵本作家・挿絵画家です。金沢美術工芸大学油絵科を卒業後、小学校教員を経て絵本の世界に入りました。独自の貼り絵技法で温かみのある作品を多数手がけ、出版された絵本は400冊以上にのぼります。主な受賞歴として、1985年度『ねこの絵本』、1986年度『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞しています。ちぎった和紙の貼り絵に着色する独自の技法で、柔らかく温かな表情の人物や動物を描き、創作童話や日本の昔話、世界の名作など多くの絵本を手がけ国際的にも高く評価されています。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、3~5歳程度が中心と考えられます。物語の親しみやすい展開や、いもとようこさんの温かみのある貼り絵が、小さな子どもたちにも理解しやすい内容となっています。また、物語のテーマである友情や協力の大切さは、成長過程で学んでほしい価値観として幼児期にぴったりです。読み聞かせにも最適で、親子で楽しい時間を共有しながら物語の魅力を味わうことができます。
レビュー
『ブレーメンのおんがくたい』は、動物たちの友情と知恵、そして新たな人生への希望を描いた心温まる作品です。いもとさんの柔らかな貼り絵は、物語の世界観を豊かに表現し、読者の心に深く響きます。子どもから大人まで楽しめる一冊であり、親子での読み聞かせにも最適です。動物たちが協力して困難を乗り越える姿は、読者に勇気と希望を与えてくれることでしょう。