
『もしかして…』は、アイルランド出身の絵本作家クリス・ホートンによる作品で、木坂涼が日本語訳を担当しています。原作のタイトルは『Maybe…』で、2021年にイギリスで出版されました。日本語版は同年、BL出版から刊行されています。物語は、親から「マンゴーの木に近づかないように」と言われた3匹の子ザルが、好奇心に駆られて木に近づき、次第に大胆な行動に出る様子を描いています。ホートン特有の鮮やかな色彩とユーモラスなキャラクター描写が光る一冊です。
略歴
クリス・ホートン
クリス・ホートン(Chris Haughton)は、1978年にアイルランドのダブリンで生まれた絵本作家、イラストレーター、デザイナーです。彼は、新聞や雑誌など多岐にわたる媒体でイラストを手掛けており、その独特でカラフルなスタイルが特徴です。2007年には、フェアトレードブランド「ピープルツリー」のために制作した作品が、タイム誌の「デザイン100選(The Style + Design 100)」に選ばれ、国際的な評価を得ました。彼の代表作である『ちょっとだけまいご』や『どうする ジョージ!』、『もしかして…』などの絵本は、シンプルながら深いメッセージ性とユーモアを持ち、世界中の子どもたちや大人たちに親しまれています。また、デザインとフェアトレードを結びつけるソーシャルビジネスサイト「node(madebynode.com)」を立ち上げ、社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。
木坂 涼(訳)
木坂涼(きさか りょう)さんは、1958年、埼玉県生まれ。和光大学人文学部芸術学科を卒業後、博報堂に勤務されました。1981年、自費出版の詩集『じかんはじぶんを』で詩人としてデビューし、その独特な作風が注目を集めました。1987年には詩集『ツッツッと』で第5回現代詩花椿賞を受賞し、1997年には『金色の網』で芸術選奨文部大臣新人賞を受賞されています。詩人としての活動に加え、エッセイスト、絵本作家、翻訳家としても幅広く活躍されています。特に、創作絵本や海外の児童文学の翻訳に力を入れており、代表作には『みんなおっぱいのんでたよ』(福音館書店)や『あいうえたいそう』(偕成社)などがあります。また、翻訳作品としては『ねずみの歯いしゃさんアフリカへいく』や『ヨセフのだいじなコート』など、多数の絵本を手掛けています。現在も、詩や絵本の創作、翻訳を通じて、子どもから大人まで幅広い読者に親しまれる作品を提供し続けています。
おすすめ対象年齢
『もしかして…』の対象年齢は、2歳から4歳以上とされています。この絵本は、小さな子どもたちが理解しやすいシンプルなストーリーと、鮮やかな色彩が特徴です。子ザルたちが好奇心から冒険を繰り広げる様子は、幼い読者の共感を引き出しやすく、また、親子での読み聞かせにも最適です。特に、未就学児の好奇心旺盛な時期にぴったりの内容で、子どもたちが物語を通じて冒険の楽しさや注意の大切さを自然に学べる構成になっています。
レビュー
『もしかして…』は、子どもたちの好奇心と冒険心を巧みに描いた作品です。親の忠告を受けつつも、興味に勝てず行動してしまう子ザルたちの姿は、子どもたち自身の姿と重なり、共感を呼びます。ホートンの独特な色使いとシンプルながら表情豊かなイラストは、物語の緊張感とユーモアを引き立てています。読み聞かせを通じて、子どもたちと一緒に「好奇心」と「危険」のバランスについて考える良い機会を提供してくれる絵本だと感じました。