
エリック・カール作、もりひさし訳の絵本『ごきげんななめのてんとうむし』は、1977年にアメリカで『The Grouchy Ladybug』として発行されました。日本では1980年に偕成社から出版されています。物語は、いつも不機嫌なてんとうむしが、他の生き物たちに次々とけんかをふっかける一日を描いています。ページのサイズが相手の大きさに合わせて変化するなど、カール独特の工夫が施されています。この絵本は、全国学校図書館協議会および日本図書館協会の選定図書にも選ばれています。
略歴
エリック・カール
エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。
もり ひさし(訳)
もり ひさし(本名:森久保仙太郎)は、1917年に神奈川県津久井郡で生まれ、鎌倉師範学校を卒業後、小学校教師として勤務しました。教育者としての経験を活かし、児童文学作家や翻訳家としても活躍しました。特に、エリック・カールの『はらぺこあおむし』やガブリエル・バンサンの作品など、多くの絵本の翻訳を手掛けました。また、わかやまけんの「こぐまちゃんえほん」シリーズの制作にも関わり、こぐま社の設立にも参加しました。2018年に亡くなるまで、教育者、歌人、児童文学作家として多彩な活動を続けました。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は4歳~6歳程度とされています。物語の展開や色鮮やかなイラスト、ページのサイズ変化など、幼児の興味を引きつける要素が豊富に含まれています。また、てんとうむしの行動を通じて、自己肯定感や他者との関わり方について考えるきっかけを提供しており、親子での読み聞かせにも適しています。
レビュー
『ごきげんななめのてんとうむし』は、エリック・カールの独特なコラージュ技法と鮮やかな色彩が印象的な作品です。主人公のてんとうむしが、自分より大きな生き物に次々とけんかを売る姿はユーモラスでありながら、自己肯定感の欠如や他者との関わり方について深く考えさせられます。ページのサイズが相手の大きさに応じて変わる仕掛けは、子どもの興味を引きつけ、読み進める楽しさを増しています。読み聞かせを通じて、子どもたちと一緒に自己肯定感や他者への思いやりについて話し合う良い機会を提供してくれる絵本だと感じました。