
『ぐりとぐらとくるりくら』は、1992年に福音館書店から出版された、なかがわりえこ作、やまわきゆりこ絵の絵本です。春の朝、野ねずみのぐりとぐらは、原っぱで朝ごはんを食べるために「ぐりぐらサラダ」と「ぐりぐらサンド」を作り、出かけます。原っぱで手長うさぎのくるりくらと出会い、一緒に朝食を楽しんだ後、くるりくらの長い手を使って木登りや雲に乗る冒険を繰り広げます。新しい友達との出会いや、自然の中での遊びを通じて、友情や冒険の楽しさを描いた作品です。
略歴
なかがわ りえこ
なかがわりえこ(中川 李枝子、1935年生まれ)は、日本を代表する児童文学作家であり、絵本作家としても広く知られています。北海道札幌市に生まれ、幼少期から自然に親しむ環境で育ちました。東京都立高等保母学院(現・都立高等保育学院)卒業し、保育士として働き始めました。この経験が、後の創作活動に大きな影響を与えています。
保育士時代に子どもたちへの読み聞かせや遊びの中で得た知識を活かし、1962年に『いやいやえん』で作家デビュー。1963年には、イラストを実妹の画家・山脇百合子(旧姓・大村)が担当した『ぐりとぐら』を発表し、広く支持を集めました。特に「ぐりとぐら」シリーズは、親しみやすい文章と温かみのある物語が特徴で、世代を超えて愛される作品となっています。
その後も数々の絵本や児童書を手がけ、子どもの目線に寄り添った物語を紡ぎ続けています。『そらいろのたね』『ももいろのきりん』など、多くの作品を発表しました。また、1988年公開のスタジオジブリの映画『となりのトトロ』では、オープニングテーマ「さんぽ」の作詞を手がけました。作品を通じて、自然や友情、日常の小さな喜びを大切にするメッセージを伝え、多くの人々に影響を与えてきました。
やまわき ゆりこ
やまわきゆりこ(旧姓:大村百合子)さんは、1941年、東京府(現・東京都)に生まれました。東京都立西高等学校を経て、上智大学外国語学部フランス語科を卒業。高校3年生のときに童話の挿絵を手掛けたことがきっかけで、絵本作家としての道を歩み始めました。姉である中川李枝子さんとの共作で「ぐりとぐら」シリーズや『そらいろのたね』など、多くの作品を世に送り出しました。1967年に『ぐりとぐらのおきゃくさま』で厚生大臣賞を受賞し、2013年には菊池寛賞を受賞しています。2022年、シェーグレン症候群による衰弱のため、80歳で逝去されました。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は3歳~6歳程度とされています。物語の内容や文章の長さ、絵の表現などがこの年齢層に適しており、子どもたちの想像力や理解力を育むのに役立ちます。
レビュー
『ぐりとぐらとくるりくら』は、春の爽やかな朝に始まる物語で、自然の美しさや新しい友達との出会いが生き生きと描かれています。ぐりとぐらの作るサラダやサンドイッチの描写は、読者の食欲をそそり、共に食事を楽しむ喜びを伝えています。また、くるりくらの長い手を使った遊びや、雲に乗るシーンは、子どもたちの想像力を刺激し、読んでいてワクワクする展開です。やまわきゆりこの柔らかく温かみのあるイラストが、物語の世界観を豊かに表現しており、読後には心地よい満足感が残ります。