
『おやすみなさいのほん』は、アメリカの作家マーガレット・ワイズ・ブラウンが文を手がけ、フランスの画家ジャン・シャローが絵を担当した絵本です。原作は『The Sleepy Book』というタイトルで、1950年にアメリカで出版されました。日本では、1962年に石井桃子の翻訳により福音館書店から刊行され、以来、子どもたちの寝かしつけに最適な一冊として親しまれています。この絵本は、夜になると動物や乗り物、そして子どもたちが次々と眠りにつく様子を、リズミカルな言葉と温かみのあるイラストで描いており、読む人を心地よい眠りの世界へと誘います。
略歴
マーガレット・ワイズ・ブラウン
マーガレット・ワイズ・ブラウン(Margaret Wise Brown, 1910-1952)は、アメリカを代表する児童文学作家で、多くの子どもたちに愛される絵本を生み出しました。特に『おやすみなさい おつきさま』(Goodnight Moon)は、彼女の代表作として知られています。ニューヨーク生まれのブラウンは、幼少期から動物や自然への関心を持ち、のちにホリンズ大学で教育を学びました。後、教師として働きながら執筆活動を開始。彼女の作品は、シンプルでリズミカルな言葉遣いと、子どもの感性を捉えた内容が特徴です。若くして急逝しましたが、その作品は今もなお、多くの読者に親しまれています。
ジャン・シャロー(絵)
ジャン・シャロー(Jean Charlot、1898年2月7日 – 1979年3月20日)は、フランス・パリ生まれの画家・版画家・イラストレーターです。母親を通じてメキシコにルーツを持ち、第一次世界大戦後にメキシコに移住しました。そこで、ディエゴ・リベラらとともにメキシコ壁画運動に参加し、独自のスタイルを確立しました。その後、アメリカ合衆国に移住し、ハワイ大学で教鞭を執るなど、多彩な活動を展開しました。彼の作品は、メキシコやハワイの文化や風景を題材にしたものが多く、絵本の挿絵も数多く手がけています。
石井桃子(訳)
石井桃子(いしい ももこ、1907年 – 2008年)は、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や『ピーターラビット』シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。石井の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。
おすすめ対象年齢
『おやすみなさいのほん』は、2歳から4歳頃の子どもたちを対象としています。シンプルでリズミカルな文章と、穏やかな色合いのイラストが特徴で、就寝前の読み聞かせに最適な一冊です。
レビュー
この絵本は、夜の静けさと安心感を見事に描いており、読み聞かせることで子どもたちだけでなく、大人も心地よい眠りへと導かれます。マーガレット・ワイズ・ブラウンの詩的な文章と、ジャン・シャローの温かみのあるイラストが絶妙に組み合わさり、読むたびに新たな発見と癒しをもたらしてくれます。石井桃子の美しい日本語訳も、作品の魅力を一層引き立てています。親子での就寝前のひとときに、ぜひ手に取っていただきたい名作です。