パイがふたつあったおはなし/ビアトリクス・ポター

『パイがふたつあったおはなし』は、ビアトリクス・ポター作、いしいももこ訳の絵本で、原題は『The Tale of the Pie and the Patty-Pan』です。1905年にイギリスで発表され、日本語版は2019年に福音館書店から新装版が発売されています。物語は、猫のリビーが犬のダッチェスをお茶会に招待するところから始まります。ダッチェスはリビーが苦手なねずみのパイを出すのではないかと心配し、自分の作った子牛のパイとすり替えようとしますが、思わぬ展開が待っています。

略歴

ビアトリクス・ポター

ビアトリクス・ポター(Beatrix Potter,1866 – 1943)は、イギリスの絵本作家であり、自然科学者、環境保護活動家でもあります。裕福な家庭に生まれ、幼少期から自然や動植物に興味を持ちました。独学で絵を学び、観察力に優れた彼女は、細密な動植物のスケッチで注目されます。1902年、代表作『ピーターラビットのおはなし』を発表し、大ヒットとなりました。その後も動物を主人公とした絵本を次々と執筆し、児童文学の金字塔を築きました。また、晩年は湖水地方の環境保護に尽力し、多くの土地をナショナル・トラストに寄贈しました。彼女の作品は、今も世界中で愛されています。

石井桃子(訳)

石井桃子(いしいももこ、1907 – 2008)さんは、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や「ピーターラビット」シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。彼女の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、読んであげる場合は5~6歳から、自分で読む場合は小学校低学年からがおすすめとされています。

レビュー

本作は、友情や思いやり、そしてコミュニケーションの大切さを教えてくれる作品です。リビーとダッチェスのやり取りは、ユーモラスでありながらも、相手を思いやる気持ちや誤解から生じるドタバタ劇が描かれています。また、ポターの繊細なイラストは、物語の舞台であるイギリスの田園風景や動物たちの表情を生き生きと伝えており、読者を魅了します。子どもだけでなく、大人も楽しめる深みのある作品であり、親子で一緒に読むことで、より一層物語の世界に浸ることができるでしょう。

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