
『ネコがすきな船長のおはなし』は、イギリスの作家インガ・ムーアによる絵本です。原作名は『Captain Cat』で、2012年にイギリスで出版されました。日本語版は、たがきょうこさんの翻訳により、2013年に徳間書店から出版されています。この絵本は、ネコを愛する船長が、ネコのいない島でネズミに悩む人々を助ける物語で、美しいイラストと心温まるストーリーが特徴です。
略歴
インガ・ムーア
インガ・ムーア(Inga Moore、1945年生まれ)は、イギリス・サセックス出身の児童書作家兼イラストレーターです。8歳のとき、家族とともにオーストラリアのアデレードへ移住しました。14歳の頃には、ジェームズ・ボズウェルの『ヘブリディーズ諸島への旅』を愛読していたといいます。レイモンド・ブリッグズの『サンタクロース』に触発され、イラストレーターを志し、1980年に『Aktil’s Big Swim』を出版しました。その後、イギリスに戻り、ロンドンのハムステッドに居住。1990年には、6つの家を持つ猫を描いた『Six-Dinner Sid』でネスレ・スマーティーズ・ブック賞を受賞しました。現在はグロスターシャーに在住し、『たのしい川べ』や『秘密の花園』などの古典作品の挿絵も手掛けています。
たがきょうこ(訳)
たがきょうこさんは1955年生まれで、子どもの頃にアメリカで生活し、現地の小学校に通学されました。上智大学外国語学部フランス語学科を卒業後、翻訳業の傍ら、図書館や小学校でストーリーテリングの活動も行っておられます。翻訳作品には『かわいいあひるのあかちゃん』『うきうきしたら』『わたしのおひめさま』などがあり、これらの作品を通じて多くの読者に親しまれています。
おすすめ対象年齢
この絵本は、読み聞かせの場合は4歳以上、自分で読む場合は小学校低学年の子どもたちにちょうど良い難易度となっています。
レビュー
『ネコがすきな船長のおはなし』は、猫をこよなく愛する船長が主人公の心温まる物語です。絵本全体を通して、インガ・ムーアの繊細で美しいイラストが物語の世界観を豊かに広げてくれます。船長がたくさんの猫と旅をする様子は、猫好きにとっては夢のような光景で、ページをめくるたびに幸せな気持ちになります。ストーリーの展開も魅力的で、猫との生活を何よりも大切にする船長の姿勢が、物や名声よりも本当に大切なものが何かを考えさせてくれます。特に、船長が猫とともに新しい人生を選ぶ結末は、読後に優しい余韻を残します。また、細部まで描き込まれたイラストは、何度見ても新たな発見があり、大人も楽しめる作品です。猫好きにはもちろん、温かい物語が好きな方にもおすすめしたい一冊です。