しろいうさぎとくろいうさぎ/ガース・ウイリアムズ

ガース・ウィリアムズ作の絵本『しろいうさぎとくろいうさぎ』(原題:The Rabbits’ Wedding)は、白いウサギと黒いウサギの愛と友情を描いた美しい物語です。ウィリアムズの温かみのあるイラストとシンプルで心温まるストーリーが、日本でも多くの人々に愛されています。
物語は、白いウサギと黒いウサギの間に芽生えた友情が深まり、やがて結婚を決意するまでの様子を描いています。彼らは一緒に広い草原で遊び、星空の下で心の中の夢や希望を語り合います。白いウサギが黒いウサギに「ずっと一緒にいたい」と伝えるシーンでは、二人の純粋な愛情が心に深く響きます。
ウィリアムズの絵は、柔らかいタッチと優しい色使いで、自然の中に溶け込むウサギたちの姿を生き生きと表現しています。また、ウサギたちが結婚を迎えるシーンでは、シンプルな中にも温かさと喜びが感じられ、読者に安らぎと幸福感をもたらします。
この作品は「愛」や「つながり」の大切さを子どもたちに伝えると同時に、大人にとっても普遍的なテーマとして共感を呼ぶ内容です。さらに、白いウサギと黒いウサギという対照的なキャラクター設定が、互いの違いを超えて一緒になることの美しさを象徴しており、人種や背景を超えた「絆」を想起させる作品としても評価されています。
シンプルで心温まる物語と優しいイラストが特徴の『しろいうさぎとくろいうさぎ』は、親子で一緒に楽しむのはもちろん、愛や友情の大切さを改めて感じさせてくれる一冊です。

略歴

ガース・モンゴメリー・ウィリアムズ

ガース・モンゴメリー・ウィリアムズ(Garth Montgomery Williams、1912年4月16日生まれ)は、アメリカ合衆国の著名なイラストレーターで、児童書や絵本の挿絵で広く知られています。彼はニュージャージー州とカナダの農場で幼少期を過ごし、10歳のときに家族とともにイギリスへ移住しました。ロンドンのウェストミンスター美術学校で建築を学んだ後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで奨学金を得て美術を専攻しました。第二次世界大戦中は英国赤十字社で活動し、戦後はアメリカに戻り、『ザ・ニューヨーカー』誌でイラストレーターとして活躍しました。E・B・ホワイトの『スチュアートの大ぼうけん』(1945年)や『シャーロットのおくりもの』(1952年)の挿絵を手がけたことで一躍有名になり、ローラ・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』シリーズの新版(1953年)でも挿絵を担当しました。晩年はメキシコのグアナフアト州で過ごし、1996年に84歳で逝去しました。

まつおか きょうこ(訳)

松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。

おすすめ対象年齢

ガース・ウィリアムズの『しろいうさぎとくろいうさぎ』は、一般的に3歳から6歳くらいの未就学児をおすすめ対象年齢としています。シンプルで心温まる物語と優しい色合いのイラストは、小さなお子さんにとっても分かりやすく、また視覚的にも楽しめる内容となっています。この絵本は、短い文章で構成されており、物語の進行がわかりやすいため、幼児から小学校低学年くらいの子どもに特に人気です。また、愛や友情のテーマが描かれているため、親子での読み聞かせにも適しています。

レビュー

『しろいうさぎとくろいうさぎ』は、何度読んでも心温まる魅力に溢れた絵本だと感じます。この絵本の美しさは、シンプルで優しいストーリーと、ウィリアムズの温かみあるイラストの見事な調和にあるでしょう。
白いうさぎと黒いうさぎの出会いから愛が深まっていく過程は、子どもでも理解しやすいシンプルな描写ながら、言葉以上に強い愛情と結びつきを感じさせます。二匹のうさぎが広がる野原で遊んだり星空を眺めたりするシーンには、まるで静かな詩を読んでいるかのような雰囲気が漂い、二匹の世界に引き込まれてしまいます。
また、白と黒の対照的なうさぎが寄り添い合い、違いを超えてともに幸せを見つける姿には、年齢を問わず多くの読者が共感できるメッセージが込められているように感じます。幼い読者にとっても、大人にとっても、「違いを認め合うこと」や「大切な存在とともに生きることの喜び」を思い出させてくれる、優しい本です。
ウィリアムズの柔らかいタッチと温かい筆遣いも、この絵本の世界をいっそう心地よいものにしていて、子どもと一緒に読むことで、より深い意味や感動が伝わる一冊です。

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