ねこのさら/野村たかあき

​『ねこのさら』は、1949年群馬県前橋市生まれの木彫家・絵本作家である野村たかあき氏が作・絵を担当し、人間国宝の落語家・柳家小三治氏が監修を務めた絵本です。 ​この作品は、江戸時代から伝わる古典落語の演目「猫の皿」を題材にしており、野村氏の温かみのある木版画で表現されています。​物語は、旅の道具屋が茶店で猫が高価な骨董品の皿でミルクを飲んでいるのを見つけ、その皿を手に入れようと策略を巡らせるが、店主とのやり取りで思わぬ展開になるという内容です。​落語の持つユーモアと人間味が、野村氏の版画を通じて親しみやすく描かれています。​この絵本は、5歳以上の子どもから大人まで楽しめる内容となっており、親子で日本の伝統文化に触れるきっかけにもなります。

略歴

野村 たかあき

野村たかあき氏は、1949年群馬県前橋市生まれの木彫家・絵本作家です。​15歳の頃、江戸時代初期の僧・円空の仏像に感銘を受け、木彫を始めました。​高校卒業後、印刷会社に勤務しながらデザインを学び、20歳で子どもの遊びをテーマにした木彫の個展を開催。​1983年に木彫・木版画工房「でくの房」を開設し、同年『ばあちゃんのえんがわ』で第5回講談社絵本新人賞を受賞。​1989年には『おじいちゃんのまち』で第13回絵本にっぽん賞を受賞しています。

柳家 小三治(監修)

​十代目柳家小三治(やなぎや こさんじ)さんは、1939年、東京府東京市淀橋区柏木(現・東京都新宿区北新宿)に生まれました。 ​1959年、五代目柳家小さんに入門し、前座名「小たけ」として修行を開始。 ​1963年に二ツ目昇進し「さん治」と改名、1969年9月には真打昇進と同時に十代目「柳家小三治」を襲名しました。 ​その後、1979年に落語協会理事、2010年には同協会会長に就任し、2014年に顧問となりました。 ​同年、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、2019年度には朝日賞を受賞するなど、多くの栄誉に輝きました。

おすすめ対象年齢

この絵本は、5歳以上の子どもから大人まで楽しめる内容となっています。​落語のエッセンスが含まれているため、親子で日本の伝統文化に触れるきっかけにもなります。

レビュー

『ねこのさら』は、古典落語「猫の皿」を題材にした絵本ですが、野村たかあき氏の温かみのある木版画と、柳家小三治師匠の監修によって、落語の世界観が巧みに表現されています。江戸時代の情景が丁寧に描かれ、登場人物の表情や仕草からもユーモアが伝わってきます。落語の持つ独特の言葉のリズムや間が、絵本という形式でどのように再現されるのかが興味深いポイントですが、野村氏の版画がその雰囲気を見事に補完しています。また、ラストのオチも落語らしく、子どもでも「なるほど」と楽しめるようになっています。日本の伝統文化に親しみやすい形で触れられる作品で、親子で読むことでさらにその魅力が増すでしょう。

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