
エリック・カールの『はらぺこあおむし』(The Very Hungry Caterpillar)は、1969年に発表された世界的に有名な絵本です。この本は、卵から孵化したあおむしが食べ物をどんどん食べていき、大きく成長し、やがて美しい蝶になるまでの成長物語を描いています。あおむしが食べた食べ物の数や種類を通じて、読者は曜日や数の概念も学べる内容になっています。カラフルでユニークなコラージュ技法を用いたイラストが特徴で、子どもたちに強い印象を残します。穴が空いたページもあおむしが食べた跡としてデザインされており、触って楽しめるインタラクティブな体験もこの絵本の魅力です。
略歴
エリック・カール
エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。
もり ひさし(訳)
もり ひさし(本名:森久保仙太郎)は、1917年に神奈川県津久井郡で生まれ、鎌倉師範学校を卒業後、小学校教師として勤務しました。教育者としての経験を活かし、児童文学作家や翻訳家としても活躍しました。特に、エリック・カールの『はらぺこあおむし』やガブリエル・バンサンの作品など、多くの絵本の翻訳を手掛けました。また、わかやまけんの「こぐまちゃんえほん」シリーズの制作にも関わり、こぐま社の設立にも参加しました。2018年に亡くなるまで、教育者、歌人、児童文学作家として多彩な活動を続けました。
おすすめ対象年齢
『はらぺこあおむし』は、主に0歳から3歳の乳幼児を対象としていますが、鮮やかなイラストや物語の成長のテーマが幅広い年齢層に楽しめる内容となっており、幼稚園や小学校低学年の子どもたちにも人気があります。絵本を通じて色や数、曜日の概念を自然に学べるため、教育的な要素もあり、多くの親や教育者からも支持されています。
レビュー
『はらぺこあおむし』は、シンプルでありながら深いメッセージが込められており、読むたびに新しい発見がある絵本です。私自身もあおむしの成長を一緒に追体験するような感覚があり、子どもたちと共にページをめくるのがとても楽しいです。あおむしが少しずつ大きくなり、やがて蝶になる姿は、人生の変化や成長をさりげなく教えてくれます。特に、あおむしがさまざまな食べ物を食べながら成長するシーンでは、子どもたちが夢中になって「あおむしと一緒に食べている気分」を楽しんでいる様子が微笑ましいです。また、エリック・カールの色彩豊かなコラージュは見ているだけで元気が出て、読み終わった後にもその色彩が目に焼き付くような印象を受けます。シンプルながらも心に残る絵本で、親子で何度でも楽しめる一冊だと感じます。