
『おにぎり』は、文を平山英三さん、絵を平山和子さんが手がけ、1992年に福音館書店から出版されました。この絵本は、炊きたてのごはんをつやつやに描き、あつあつの湯気の中で手に塩をつけ、梅干しを入れてにぎるまでの工程を、やさしい文章とリアルな写実画で丁寧に描いています。作ることに焦点が当てられていますが、見ているだけでおなかがすいてくるような臨場感があります。日本の家庭の味と、手でにぎる温かみを感じられる一冊です。
略歴
平山 英三
平山英三(ひらやま えいぞう、1926年 – 2008年)は、日本の絵本作家・児童文学作家。東京都生まれ。出版社勤務を経て、児童書の編集に関わる中で作家活動を開始。特に妻・平山和子との共作で知られ、『くだもの』(1981年)など、日常をテーマにした作品を数多く発表しました。生活に根差した優しい語り口と、子どもに寄り添う視点が魅力。日本の絵本界における草分け的存在です。
平山 和子
平山和子(ひらやま かずこ、1943年 – 2011年)は、日本の絵本作家であり、リアリズムに基づいた精緻な描写で知られています。東京生まれで、大学卒業後は画家として活動を始める一方、絵本制作に取り組みました。代表作の『くだもの』は、色鮮やかなリアルな果物の描写と、幼児向けの親しみやすい内容で高く評価されています。
彼女の作品は、自然や日常の美しさを描くことに定評があります。他にも『やさい』『いちご』などの作品があり、多くの子供たちに愛されています。平山さんの絵本は、シンプルでありながら温かみのあるイラストと、親しみやすいストーリーが特徴です。
おすすめ対象年齢
絵本『おにぎり』の対象年齢は1歳から3歳程度がおすすめです。シンプルな言葉と、身近な食べ物を題材にしているため、食べ物に興味を持ち始める幼児にぴったりです。親子で一緒に読むことで、食べ物の大切さや感謝の気持ちを育むこともできるでしょう。
レビュー
『おにぎり』は、静かであたたかな世界が広がる絵本です。ごはんの炊き上がる湯気、手に塩をつけてにぎる感触、そしてしっとりとした海苔の質感まで、五感に訴える描写が印象的です。食べるシーンはありませんが、「にぎる」という行為を通して、食への愛情や丁寧に暮らすことの大切さが自然と伝わってきます。幼い頃におにぎりをにぎってもらった記憶がよみがえり、心がほっとする一冊。親子で一緒に読むことで、日常のなかにある小さな幸せを見つめ直すきっかけにもなる、そんな優しい力を感じました。