せかいいち おおきなうち/レオ・レオニ

レオ・レオニ作・絵、谷川俊太郎さん訳の『せかいいち おおきなうち りこうになったかたつむりのはなし』は、1968年にアメリカで発行された『The Biggest House in the World』の日本語版で、1969年に好学社より刊行されました。​物語は、「世界でいちばん大きな家がほしい」と願う小さなかたつむりに、お父さんが語る寓話を通じて展開されます。​欲張りすぎることの危うさや、自由の本当の意味をやさしく伝える哲学的な絵本です。​レオ・レオニの美しいコラージュ技法と、谷川俊太郎の詩的な翻訳が魅力の一冊です。​

略歴

レオ・レオニ

レオ・レオニ(Leo Lionni, 1910-1999)は、オランダのアムステルダムで生まれた絵本作家であり、デザイナー、芸術家です。幼少期をオランダやイタリア、アメリカで過ごし、大学では経済学を学びましたが、後にアートの道へ進みました。アメリカに移住し、広告業界で成功を収める一方、モダンアートにも深い関心を寄せました。50歳を過ぎてから絵本作家としての道が開かれます。彼の作品は、美しいコラージュや温かいストーリーが特徴で、『スイミー』『フレデリック』『アレクサンダとぜんまいねずみ』などが代表作です。子どもたちに創造力や多様性の大切さを伝える名作を多く残しました。

谷川俊太郎(訳)

谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠しました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。

おすすめ対象年齢

この絵本は、3~4歳頃から小学校低学年までの子どもたちに適しています。​親子の対話形式で展開されるため、読み聞かせにも最適で、親子のコミュニケーションのきっかけにもなります。​また、大人にとっても深いメッセージ性があり、世代を超えて楽しめる作品です。​

レビュー

この絵本は、物質的な欲望と自由のバランスについて考えさせられる作品です。​小さなかたつむりが「大きな家」を望む気持ちは、誰もが抱く願望ですが、その結果として失われるものの大きさに気づかされます。​レオ・レオニの繊細なコラージュと、谷川俊太郎の詩的な翻訳が相まって、物語の深みを増しています。​子どもだけでなく、大人にも響く普遍的なテーマを持つ一冊です。​

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