
『マシューのゆめ えかきに なった ねずみの はなし』(原題:Matthew’s Dream)は、レオ・レオニ作・絵、谷川俊太郎さん訳による絵本です。1991年にアメリカで初版が発行され、日本語版は1992年に好学社から刊行されました。物語は、貧しいネズミの少年マシューが美術館を訪れ、芸術に目覚めて画家を目指すという内容で、夢を追う勇気と創造力の大切さを描いています。レオニ特有のコラージュ技法と色彩豊かなイラストが魅力的な一冊です。
略歴
レオ・レオニ
レオ・レオニ(Leo Lionni, 1910-1999)は、オランダのアムステルダムで生まれた絵本作家であり、デザイナー、芸術家です。幼少期をオランダやイタリア、アメリカで過ごし、大学では経済学を学びましたが、後にアートの道へ進みました。アメリカに移住し、広告業界で成功を収める一方、モダンアートにも深い関心を寄せました。50歳を過ぎてから絵本作家としての道が開かれます。彼の作品は、美しいコラージュや温かいストーリーが特徴で、『スイミー』『フレデリック』『アレクサンダとぜんまいねずみ』などが代表作です。子どもたちに創造力や多様性の大切さを伝える名作を多く残しました。
谷川俊太郎(訳)
谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠しました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。
おすすめ対象年齢
この絵本は、4~5歳から小学校低学年の子どもたちを主な対象としています。夢や自己表現に関心を持ち始める時期に、想像力や芸術への興味を育むのに適しています。また、大人にとっても深いメッセージを感じ取れる作品です。
レビュー
『マシューのゆめ』は、子どもが自分の夢を見つけ、困難を乗り越えて成長する姿を描いています。マシューが美術館で芸術に触れ、自分の進むべき道を見つける過程は、読む者に希望と勇気を与えてくれます。レオニの独特なコラージュ技法と鮮やかな色彩が、物語の世界観を豊かに表現しており、視覚的にも楽しめます。また、谷川俊太郎さんの訳文が、詩的でリズミカルな言葉遣いで物語を引き立てています。子どもだけでなく、大人も心に響く一冊です。