レオ・レオニ作・絵、谷川俊太郎さん訳の絵本『どうするティリー?』は、1989年にアメリカで出版された『Tillie and the Wall』の日本語版で、2002年にあすなろ書房から刊行されました。物語は、壁の向こうに何があるのかを知りたいと願う若い野ねずみ・ティリーが、探求心と勇気で行動を起こす姿を描いています。レオニ特有のコラージュ技法による温かみのあるイラストと、谷川俊太郎さんの翻訳が魅力です。この作品は、既成概念にとらわれずに世界を見つめ直すことの大切さを教えてくれます。
略歴
レオ・レオニ
レオ・レオニ(Leo Lionni, 1910-1999)は、オランダのアムステルダムで生まれた絵本作家であり、デザイナー、芸術家です。幼少期をオランダやイタリア、アメリカで過ごし、大学では経済学を学びましたが、後にアートの道へ進みました。アメリカに移住し、広告業界で成功を収める一方、モダンアートにも深い関心を寄せました。50歳を過ぎてから絵本作家としての道が開かれます。彼の作品は、美しいコラージュや温かいストーリーが特徴で、『スイミー』『フレデリック』『アレクサンダとぜんまいねずみ』などが代表作です。子どもたちに創造力や多様性の大切さを伝える名作を多く残しました。
谷川俊太郎(訳)
谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠されました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。
おすすめ対象年齢
対象年齢は、幼児から小学校低学年(3歳〜6歳以上)とされています 。物語のテーマや表現は、年齢に応じて異なる気づきを与えるため、幅広い年齢層で楽しめます。
レビュー
『どうするティリー?』は、レオ・レオニ作品の中でも特に“壁を越える”という比喩が印象的な一冊です。ティリーの「自分の目で確かめたい」という純粋な好奇心と行動力は、子どもたちだけでなく、大人にとっても心に響きます。困難に直面してもあきらめず、自分なりの方法を模索する姿に勇気づけられました。レオニの美しいコラージュと、谷川俊太郎さんの訳が絶妙にマッチしていて、詩のように読めるのも魅力のひとつです。読後には、何かに挑戦したくなるような前向きな気持ちが残りました。