びっくりたまご/レオ・レオニ

『びっくりたまご』は、レオ・レオニによる原作 “An Extraordinary Egg”(1994年、アメリカ発行)を、谷川俊太郎さんが日本語訳した絵本です。物語は、好奇心旺盛なカエルのジェシカが見つけた「白くてつるつるした丸いもの」をきっかけに展開。彼女はそれを卵と信じ、やがてワニの赤ちゃんがかえりますが、ジェシカたちはそれを「にわとり」と思い込みます。このナンセンスで愛らしい誤解がユーモアを生み、レオニならではの色彩と造形が物語を引き立てます。日本語版は好学社から1995年に刊行されました。

略歴

レオ・レオニ

レオ・レオニ(Leo Lionni, 1910-1999)は、オランダのアムステルダムで生まれた絵本作家であり、デザイナー、芸術家です。幼少期をオランダやイタリア、アメリカで過ごし、大学では経済学を学びましたが、後にアートの道へ進みました。アメリカに移住し、広告業界で成功を収める一方、モダンアートにも深い関心を寄せました。50歳を過ぎてから絵本作家としての道が開かれます。彼の作品は、美しいコラージュや温かいストーリーが特徴で、『スイミー』『フレデリック』『アレクサンダとぜんまいねずみ』などが代表作です。子どもたちに創造力や多様性の大切さを伝える名作を多く残しました。

谷川俊太郎(訳)

谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠されました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。

おすすめ対象年齢

『びっくりたまご』は、3歳頃から小学校低学年までの子どもにおすすめです。ユーモアあふれる展開と、レオニらしいコラージュ風のイラストが視覚的にも楽しめます。生き物への関心が育つ時期にぴったりで、親子で楽しみながら「ものの見方の違い」や「好奇心の大切さ」に気づくことができます。

レビュー

この絵本は、レオ・レオニのユーモアと哲学が詰まった一冊だと感じます。カエルがワニを「にわとり」と信じ込む展開には思わず笑ってしまいますが、同時に「固定観念」について考えさせられます。登場人物たちが最後まで自分たちの認識を疑わずに話が進む様子は、子どもの純粋さと大人の先入観の危うさを対比しているようにも感じました。鮮やかな色彩のコラージュも魅力で、読み聞かせにもぴったり。子どもにも大人にも響く知的で愉快な物語です。