とこちゃんはどこ/松岡 享子

​『とこちゃんはどこ』(作:松岡享子さん、絵:加古里子さん)は、1970年に福音館書店から出版された絵本です。 赤い帽子をかぶった男の子・とこちゃんが人混みの中で迷子になり、読者がページごとに彼を探す構成となっています。 加古里子さんの緻密でユーモラスなイラストが、探す楽しさを引き立てます。 この絵本は100刷を超えるロングセラーで、親子で楽しめる作品として長年愛されています。

略歴

松岡享子

松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。

加古里子(絵)

加古 里子(かこ さとし,1926年 – 2018年)さんは、福井県今立郡国高村(現・越前市)生まれの絵本作家、児童文学作家です。東京大学工学部を卒業後、化学技術者として働くかたわら、児童文化活動に従事しました。1959年に自費出版した絵本『だむのおじさんたち』が注目され、その後多くの絵本を世に送り出しました。代表作『からすのパンやさん』(1973年)をはじめ、『だるまちゃんとてんぐちゃん』のだるまちゃんシリーズや科学絵本など、幅広いテーマで多くの名作を生み出しました。かこ さとしさんの作品は、子どもの視点に立った優しい語り口や、精密で温かみのあるイラストが特徴です。また、科学的知識をわかりやすく解説した本も数多く手がけ、子どもたちの好奇心を刺激しました。亡くなるまで創作を続け、生涯で600冊以上の作品を発表しました。彼の絵本は、日本のみならず世界中で愛され続けています。

おすすめ対象年齢

対象年齢は3歳から5歳程度が目安です。 視覚的な遊びとストーリーのシンプルさが、幼児の集中力や観察力を育むのに適しています。

レビュー

『とこちゃんはどこ』は、何度読んでも飽きない絵探しの魅力にあふれた絵本です。赤い帽子のとこちゃんを人混みの中から探すというシンプルな構成ながら、加古里子さんの細部まで描き込まれたイラストが読者の目を惹きつけます。一見ごちゃごちゃした背景の中にもストーリーがあり、まるで町全体をのぞき見るような楽しさがあります。ページをめくるごとに新たな発見があり、子どもと一緒に笑ったり驚いたりする時間が生まれます。集中力や観察力を養う点でも優れた作品です。

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