キーウの月/ジャンニ・ロダーリ

『キーウの月』は、イタリアの国民的作家ジャンニ・ロダーリが1960年に発表した詩「La luna di Kiev」を原作とし、同国の絵本作家ベアトリーチェ・アレマーニャが絵を担当、内田洋子さんが翻訳した絵本です。​2022年4月、ウクライナ支援のためにイタリアで緊急出版され、日本語版は同年に講談社から刊行されました。​この絵本は、少年が「キーウの月はローマの月のようにきれいなのかな」と問いかけると、月が「わたしはいつもわたしです!」と答える詩的な対話を描いています。​月が世界中を旅しながら、すべての人々に光を届ける様子が、美しいイラストとともに表現されています。​売上の利益や翻訳料、デザイン料はウクライナ支援のために寄付されました 。

略歴

ジャンニ・ロダーリ

ジャンニ・ロダーリ(Gianni Rodari)は1920年、イタリア・ピエモンテ州オメーニャ生まれの作家・詩人・教育者。17歳で教員資格を取得し、小学校教師として勤務。第二次世界大戦中はレジスタンス運動に参加し、1944年にはイタリア共産党に加入。戦後はジャーナリストとして活動を始め、1948年から児童文学の執筆を開始。代表作に『チポリーノの冒険』『空にうかんだ大きなケーキ』『ランベルト男爵は二度生きる』などがあり、1970年には国際アンデルセン賞を受賞。その作品は多くの言語に翻訳され、20世紀イタリアにおける最も重要な児童文学作家とされています。

ベアトリーチェ・アレマーニャ(絵)

ベアトリーチェ・アレマーニャ(Beatrice Alemagna)は1973年、イタリア・ボローニャ生まれのイラストレーター兼作家。イタリアのグラフィックスクールを卒業後、1997年からパリを拠点に活動。ポンピドゥー・センターのポスター制作を10年以上手がけるなど、幅広い分野で活躍。絵本『On a Magical Do-Nothing Day』や『Child of Glass』は、ニューヨーク・タイムズとニューヨーク公共図書館の児童書ベスト10に選出され、前者はニューヨーク・イラストレーターズ・ソサエティ主催のオリジナルアート賞で金賞を受賞。2010年にはアンデルセン・イラストレーター賞を受賞し、2014年から2019年までの間、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞に6度ノミネートされるなど、国際的に高く評価されています。これまでに40冊以上の児童書を出版し、多言語に翻訳されています。

内田洋子(訳)

内田 洋子(うちだ ようこ)さんは1959年、兵庫県神戸市生まれのジャーナリスト。​東京外国語大学イタリア語学科卒業後、イタリア・ナポリ東洋大学に留学。​卒業後、ミラノで通信社UNO Associates Inc.を設立し、代表として日本のメディアにヨーロッパのニュースや写真を提供。​2011年には『ジーノの家 イタリア10景』で日本エッセイスト・クラブ賞と講談社エッセイ賞を受賞。​2020年にはイタリアの書店員連盟から「金の籠賞(GERLA D’ORO)」を外国人として初めて受賞。​著書に『ミラノの太陽、シチリアの月』『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』などがあり、ジャンニ・ロダーリの作品『パパの電話を待ちながら』『緑の髪のパオリーノ』などの翻訳も手がけています。

おすすめ対象年齢

対象年齢は幼児から大人までとされており、特に小学生から中学生におすすめです。​短い詩と美しいイラストが、年齢を問わず平和について考えるきっかけを与えてくれます。​読み聞かせにも適しており、家族や学校での読書活動に最適です。

レビュー

この絵本を読んで、月が国境や文化を越えてすべての人々に光を届ける存在であることに改めて気づかされました。​ロダーリの詩とアレマーニャのイラストが融合し、平和と連帯のメッセージが心に深く響きます。​特に、月が「わたしはいつもわたしです!」と語る場面は、世界中の人々がつながっていることを象徴しており、感動的でした。​この絵本は、子どもたちだけでなく、大人にも平和について考える大切さを教えてくれる一冊です。

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