グリム あかずきん/グリム

『あかずきん』は、グリム兄弟によるおとぎ話「あかずきん」を原作とした絵本で、美しい挿絵はリスベート・ツヴェルガーが手がけ、翻訳は池田香代子が担当しています。この絵本は、グリム童話の象徴的な作品を洗練されたイラストで表現し、繊細で幻想的な世界観が魅力です。リスベート・ツヴェルガーのイラストは、まるで絵画のような美しさがあり、物語の不思議で少し怖さも感じさせる雰囲気を見事に捉えています。彼女の特徴的な画風があかずきんの物語をさらに引き立て、読者を物語の中に引き込むような力を持っています。

略歴

グリム兄弟

グリム兄弟[ヤーコプ・グリム (Jakob Grimm) とヴィルヘルム・グリム (Wilhelm Grimm)]は、19世紀ドイツを代表する言語学者であり民俗学者です。彼らは1785年(ヤーコプ)と1786年(ヴィルヘルム)にドイツのハーナウに生まれ、マールブルク大学で法学を学ぶ中で民族文化や言語への関心を深めました。特に民間伝承や童話に強い興味を抱き、各地の口承文学を収集し、それを基にした『グリム童話集』を1812年に初めて出版しました。この作品は、単なる子供向けの物語ではなく、当時の民衆文化や価値観を反映した重要な文化遺産として高く評価されています。兄ヤーコプは特にドイツ語の文法研究や辞書編纂にも尽力し、弟ヴィルヘルムは物語の文体や編集に秀でていました。彼らの活動は、ドイツの統一と民族意識の高揚にも寄与しました。
彼らの作品には、『赤ずきん』や『おおかみと七ひきのこやぎ』、『ブレーメンのおんがくたい』、『こびとのくつや』、「シンデレラ」、「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」など、今日でも世界中で愛されている物語が多く含まれています。

フェリクス・ホフマン

フェリクス・ホフマン(1911年-1975年)は、スイスのアーラウ出身のグラフィックデザイナー、イラストレーター、アーティストです。バーゼルの美術学校やドイツのカールスルーエ州立美術学校で学び、ステンドグラスやフレスコ画、エッチング、絵本の挿絵など多岐にわたる作品を手がけました。特に、グリム童話の挿絵で知られ、その繊細なタッチと深い物語理解で高い評価を受けています。

瀬田貞二

瀬田貞二(1916年 – 1979年)は、東京出身の翻訳家、児童文学者です。東京帝国大学文学部を卒業後、絵本の翻訳や再話を多数手がけ、日本の絵本文化に大きく貢献しました。特に、グリム童話やアンデルセン童話の翻訳で知られ、その流麗な日本語訳は多くの読者に親しまれています。
代表作には『グリム童話全集』の翻訳があり、日本語の美しさと原作の忠実さを兼ね備えた訳文が特徴です。『おおかみと七ひきのこやぎ』などの絵本翻訳でも活躍し、日本の児童文学文化の発展に大きく貢献しました。

おすすめ対象年齢

『グリム あかずきん』は、一般的に小学校低学年(6〜8歳)以上のお子さまに向けておすすめされることが多いです。この絵本は、物語の内容やリスベート・ツヴェルガーの繊細なイラストが含まれているため、少し成長したお子さまがより楽しめる作品となっています。また、大人にも評価される芸術的なイラストレーションが特徴で、幅広い年齢層に受け入れられる内容です。

レビュー

『グリム あかずきん』は、リスベート・ツヴェルガーの美しいイラストと、グリム童話の持つ深みが見事に融合した絵本だと思います。ツヴェルガーのイラストは、シンプルでありながらも繊細で、物語のもつ少し不気味さや神秘的な雰囲気を巧みに表現しています。色彩や構図も控えめであるため、読者に想像の余地を残してくれるのが魅力です。
また、翻訳を担当した池田香代子さんの言葉選びも、原作の持つ時代性や美しさを損なわずに伝えてくれます。シンプルな文章でありながらも、物語の核心に迫る力強さが感じられます。特に、あかずきんの純真さや、おばあさんへの愛情、そして物語が迎える暗くも希望を感じさせる結末が、読む人の心に余韻を残します。
この絵本は子どもだけでなく、大人も楽しめる芸術的な作品で、家族で一緒に読みながら物語について語り合う機会を与えてくれる一冊です。

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