『あらしのよるに』(作:きむらゆういち/絵:あべ弘士、講談社、1994年刊)は、嵐の夜に出会ったオオカミとヤギの、ちょっと不思議な友情の物語。暗闇の中でお互いの姿が見えないまま会話を交わし、翌日「またあした、あらしのよるに」と再会を約束する場面が印象的。この1冊は、後にシリーズ全7巻へと続いていく序章でもあります。対立する動物たちの間に芽生える信頼と友情が、子どもから大人まで幅広い世代の心に響きます。
略歴
きむら ゆういち
きむら ゆういちさん(本名:木村 裕一)は、1948年東京都生まれ。多摩美術大学を卒業後、造形教育の指導やテレビ幼児番組のアイディアブレーンなどを経て、絵本・童話作家として活躍されています。代表作には『あらしのよるに』シリーズ(講談社)や『あかちゃんのあそびえほん』シリーズ(偕成社)などがあり、国内外で1000冊以上の著書があります。『あらしのよるに』で講談社出版文化賞絵本賞、産経児童出版文化賞JR賞を受賞。また、純心女子大学の客員教授も務められています。
あべ 弘士(絵)
あべ 弘士(あべ ひろし)さんは1948年北海道旭川市生まれ。高校卒業後、旭山動物園の飼育員として25年間勤務し、その経験を活かして絵本作家へ転身。動物のリアルな描写や、力強くもやさしい絵が特徴で、『あらしのよるに』や『ゴリラにっき』など数々の作品を発表。1995年に『あらしのよるに』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。現在も北海道を拠点に、動物のいのちや自然をテーマに創作を続けています。
おすすめ対象年齢
『あらしのよるに』は、対象年齢はおおよそ小学校低学年から。ですが、深いテーマが含まれているため、読み聞かせであれば幼児にも楽しめますし、大人が読んでも心に残る内容です。文字数は多めなので、一人読みは小学校低学年くらいからがオススメです。絵本としても読み物としても味わえる一冊です。
レビュー
一見、敵対するはずのオオカミとヤギが「声」だけで心を通わせる展開に、ぐっと引き込まれました。正体が分からないからこそ、偏見や先入観のない関係が築けたという構造が面白く、読むたびに新しい発見があります。あべさんの力強くも温かい絵が、嵐の緊張感と出会いの温かさをうまく表現していて、物語の世界に自然と引き込まれました。シリーズで読むと、友情の深まりと葛藤がより味わえてオススメです。