
サム・マクブラットニィの『どんなにきみがすきだかあててごらん』(Guess How Much I Love You)は、1994年に発表された、親子の愛をテーマにした絵本です。主人公は「ちびウサギ」と「おおきなウサギ」で、二人が「どれだけ愛しているか」を互いに伝え合うほほえましいやりとりが描かれています。「ぼくのこと、こんなにすき?」と聞くちびウサギに、さらに大きな愛情で応えるおおきなウサギの姿が、愛情の深さをユーモラスに示しています。親子で読むのにぴったりな温かみのあるストーリーと、アニタ・ジェラームによるやさしいタッチの挿絵が、長年にわたって世界中で愛されている理由です。
サム・マクブラットニィの略歴
サム・マクブラットニィ
サム・マクブラットニィ(Sam McBratney、1943年~2020年)は、北アイルランド出身の作家で、子ども向けの絵本や小説で知られています。トリニティ・カレッジ・ダブリンで学び、教師として働くかたわら執筆活動を始めました。代表作『どんなにきみがすきだかあててごらん』(Guess How Much I Love You、1994年)は、イラストレーターのアニタ・ジェラームと共に手掛け、世界的なベストセラーとなりました。この作品は40以上の言語に翻訳され、親子の愛情を描いた心温まる内容で、多くの読者に愛されています。生涯で70冊以上の本を出版し、読者に深い感動を与えました。
アニタ・ジェラーム(絵)
アニタ・ジェラーム(Anita Jeram)は、1965年にイギリスのポーツマスで生まれました。マンチェスター・ポリテクニクでイラストレーションを学び、卒業後1年で最初の絵本を出版しました。彼女の代表作には、サム・マクブラットニィとの共作『どんなにきみがすきだかあててごらん』や『パパとママのたからもの』、自身が文と絵を手掛けた『ぼくはぼくのほんがすき』などがあります。ジェラームの作品は、温かみのある水彩画と繊細な描線が特徴で、動物たちの豊かな表情や仕草を通じて、読者に深い感動を与えています。彼女のイラストは、子どもだけでなく大人にも愛され、世界中で多くの読者に親しまれています。
小川 仁央(訳)
小川 仁央(おがわひとみ)さんは、英米の絵本や物語を中心に活躍する翻訳家です。具体的な生年月日や出身地などの詳細な経歴は公開されていませんが、これまでに多くの絵本を日本語に翻訳し、読者に届けてきました。主な訳書には、スーザン・バーレイ作『わすれられないおくりもの』、サム・マクブラットニィ作『どんなにきみがすきだかあててごらん』、デイビッド・シャノン作『だめよ、デイビッド!』、ベンジー・デイヴィス作『おじいちゃんのゆめのしま』などがあります。これらの作品を通じて、子どもたちや大人に感動や喜びを提供し、絵本の魅力を広める役割を果たしています。
おすすめ対象年齢
『どんなにきみがすきだかあててごらん』は、3歳から5歳の幼児を主なおすすめ対象年齢としていますが、親子の愛情を描いた内容は幅広い年齢層に響くため、赤ちゃんから小学校低学年まで楽しめます。親子で一緒に読むことで、安心感や愛情を伝えるのにぴったりの絵本として人気です。
レビュー
親子の愛情をテーマにした心温まる絵本で、読むたびに胸がじんわりと温かくなる作品です。小さなうさぎが「どれだけ好きか」を表現しようと全力で考える姿が愛らしく、またその気持ちに応えようとする大きなうさぎの優しさがあふれています。このやりとりを通じて、親子の「愛の無限大さ」が自然と伝わってきます。
特に、小さなうさぎが懸命に「愛」を表現しようとするたびに、大きなうさぎがそれを包み込むように返してくれる場面は、子どもにとっても安心感や親近感を抱かせることでしょう。また、やわらかく温かみのあるイラストが物語に寄り添い、自然の中で繰り広げられる親子のやりとりがさらに穏やかな気持ちを引き出してくれます。
サム・マクブラットニィ自身も『どんなにきみがすきだかあててごらん』がこんなに多くの人に愛される作品になるとは予想していなかったそうです。彼にとって、うさぎ親子の愛情のやりとりは、「自分にとっての家族の絆や、子どもと向き合う温かなひととき」を描きたかったものの表現でもあり、自然に生まれたものでした。マクブラットニィは「この本が多くの親子にとって、愛情を言葉にする一つのきっかけになることは本当に嬉しいことです」とも語っていました。
また、マクブラットニィはこの作品の成功について、「私が作った物語というよりは、読者がそれぞれに思い描く愛の物語に変わっていったようだ」と感じていたそうです。世界中の親子がこの本を通して、自分たちの愛情を確認し合うきっかけになっていることを知り、作家として誇りと感謝の気持ちを抱いていたといわれています。
親子で読むと、自然と「どんなにきみがすきか」という会話が始まり、改めて互いの愛情を確認し合えるのも素敵です。この絵本は、愛の深さや無限の優しさを感じさせ、読み終わったあとも心にやさしい余韻が残ります。