ぞうのエルマー/デビッド・マッキー

ぞうのエルマー』(原題 Elmer the Patchwork Elephant)は、イギリス作家デビッド・マッキーが1968年に初版を発表し、1989年にカラフルな差し替え版が再刊された代表作です。パッチワーク模様のエルマーが「自分らしさ」を見つめ直すユーモラスな物語は、今も世界50か国語で読まれるロングセラー。日本語版はきたむらさとし訳で2002年、BL出版より刊行。多様性を祝うメッセージがストレートに伝わり、読み聞かせの定番となっています。

略歴

デビッド・マッキー

デビッド・マッキー(David McKee)は1935年英デヴォン生まれ。プリマス美術学校で学び、卒業後は新聞やテレビ向けの漫画を描くかたわら絵本を制作。1967年デビュー後、『ぞうのエルマー』『Not Now, Bernard』『Mr Benn』などで英国児童文学界の顔に。絵と文を同時に手掛けるスタイルで、「違いを楽しむ」テーマをユーモアたっぷりに描いた。2022年、南仏で家族に見守られながら87歳で永眠されました。作品は累計1,000万部を超え、アニメや舞台化も盛んに続く。

きたむら さとし(訳)

きたむら さとしさんは1956年東京生まれ。1979年に渡英し、82年『Angry Arthur』でマザーグース賞を受賞して世界デビュー。以降40年以上ロンドンと日本を拠点に活動し、『ぼくはおこった』『ミリーのすてきなぼうし』『スマイルショップ』などを発表。翻訳家としてもマッキー作品をはじめ海外絵本の紹介に尽力し、日本の読者に多文化の楽しさを届けている。現在は神戸市在住、大学で後進育成にも携わる。

おすすめ対象年齢

出版社推奨は2〜6歳。“色とりどりの象”というビジュアルだけで幼児の心をつかむ一方、ストーリーは「みんなと違うって悪いこと?」という哲学的テーマを含むため、小学校低学年の道徳教材にも◎。親子で「自分らしさ」について話す糸口にぴったりです。

レビュー

初読時はエルマーのド派手な模様に「目立ちたがり屋だな~」と笑ったけれど、彼が灰色に塗って群れに溶け込もうとする場面でハッとしました。違いを消そうとすると、楽しさまで一緒に消えてしまうんだな、と。最後に仲間が自発的に体をカラフルに染めるシーンは爽快で、ページを閉じても“自分色のままでいい”というメッセージが背中を押してくれます。読むたび元気をくれる一冊。