おまたせクッキー/パット・ハッチンス

おまたせクッキー』(原題 The Doorbell Rang)は、パット・ハッチンス作・絵、1987年にイギリスで刊行された絵本です。お母さんが焼いたおいしそうなクッキーを、きょうだいが2人で食べようとしたその時…「ピンポーン!」と玄関チャイムが鳴るたびに友だちが増え、人数は4人、6人、12人へ。クッキーはどんどん減っていき、最後はどうなる!? 日本語版は1987年に乾侑美子さん訳で偕成社から発売。笑いながら家族や友達の“分け合い”を自然に学べる絵本です。

略歴

パット・ハッチンス

パット・ハッチンス(Pat Hutchins、1942–2017)は、イギリス・ヨークシャー出身の絵本作家兼イラストレーター。ダーリントン美術学校やリーズ美術専門大学で学び、卒業後はロンドンの広告代理店勤務を経て1968年に児童書界へ進出。デビュー作の『Rosie’s Walk(ロージーのおさんぽ)』が高評価を受け、代表作『風がふいたら』(1974)ではケイト・グリーナウェイ賞を受賞しました。その後『ティッチ』シリーズをはじめ、40冊以上の絵本を自作自画し、『Rosie and Jim』でテレビにも出演。英国児童文学界のアイコン的存在として活躍し、2017年にロンドンで永眠されました。

乾 侑美子(訳)

乾 侑美子(いぬいゆみこ)さんは、1941年東京都生まれのお茶の水女子大学教育心理学科ご出身。1964年卒業後、家庭文庫を手がけたのをきっかけに児童書翻訳の世界へすすみました。以来、日本の子どもたちに寄り添う自然な訳文で数多くの洋書絵本を紹介。たとえばマーガレット・ワイズ・ブラウンの『さんびきのちいさいどうぶつ』(1978年刊)や、パット・ハッチンス作品も多数翻訳しています。絵本のリズムや言葉の響きを大切にする翻訳が評価され、長年にわたり児童文学界で活躍。2010年7月に惜しくもお亡くなりになりましたが、その翻訳は今も読み継がれ、多くの親子の共読時間を支えています。

おすすめ対象年齢

対象は4歳頃からいいかも。ピンポーン!の繰り返しや友だちがどんどん増える展開が小さい子でもワクワク♪ クッキーの枚数や人数の増加・減少を追うことで、数や順序の概念にも触れられます。「順番?公平?わかんない」な幼児にぴったり。テンポよくテンション高めに読むと、読み聞かせがもっと楽しくなる一冊です。

レビュー

ピンポン連続でどんどん増える登場人物、子ども心をくすぐります。最初は2人でニコニコ始まるおやつタイムが、「え、また誰?」と読むたびハラハラ。クッキーは「みんなの取り分」がどんどん減って最後どうなるの?!ってドキドキ。でも最後にちゃんと“おりこうさんのご褒美”があるのがいいんですよね。読み終えた後は「次はうちもおやつみんなで!」って気分になれるし、「分けるって楽しい!」って思わせてくれるポジティブな余韻。乾さんの訳も声に出すとテンション上がるリズムで、本読みながら子どもと一緒に笑える、最高の読み聞かせ絵本です。