『きみだけの夜のともだち』(原題 Gaspard dans la nuit)は、フランスの作家セング・ソウン・ラタナヴァンが2020年に発表した、夜がちょっぴり怖い子どもたちに寄り添う優しい絵本。ある夜、不安で眠れない男の子ガスパールの前に小さなネズミが現れて、家の中を探検する冒険が始まります。ピアノが苦手なうさぎや、水が怖いペンギンなど、不安を抱えた動物たちとの出会いが、ガスパールの心を少しずつほぐしていきます。そして物語のラストでは、ガスパールがベッドですやすやと眠る静かなシーン。派手な展開はないけれど、夜の不安とそっと向き合ってくれるような静けさとあたたかさが詰まった一冊です。日本語版は西加奈子さんのやわらかな訳で、2022年にポプラ社から刊行されました。
略歴
セング・ソウン・ラタナヴァン
セング・ソウン・ラタナヴァン(Seng Soun Ratanavanh)は、1974年ラオス生まれ、現在はパリ郊外で活躍するフランスのイラストレーター&絵本作家です。パリ国立高等美術学校(ENSBA)を卒業後、2016年に児童書初挑戦の『Attends Miyuki』を刊行。以降、『Au lit Miyuki』(2017)、『Merci Miyuki』(2018)など“Miyuki”シリーズを発表し、その和風テイストと色彩豊かな作風で人気を博しました。2020年に発表した『Gaspard dans la nuit』(邦題『きみだけの夜のともだち』)では、2021年にフランスの賞「ランデルノー賞アルバム部門」を受賞。以降、『Un câlin tout doux』(2019)や『Propre de la tête aux pieds』(2021)などを自作絵本として執筆・絵も担当し、フランスとギリシャなど欧州各国で展開。日本でも西加奈子さん訳で紹介され、大判絵本の美しい世界観が高く評価されています
西 加奈子(訳)
西 加奈子(にし かなこ)さんは、1977年、イラン・テヘランで生まれ、幼少期はエジプト・カイロ、そして大阪で育ちました。関西大学法学部を卒業後、雑誌のライターやカフェ経営などを経て、2004年に『あおい』で作家デビュー。2007年『通天閣』で織田作之助賞、2013年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞を受賞し、2015年の大作『サラバ!』で直木三十五賞を獲得。その後も多彩な小説や絵本のほか、自身の乳がん体験を綴ったノンフィクション『くもをさがす』(2023年)など執筆活動が止まらず、2024年は読売文学賞も受賞。翻訳絵本『きみだけの夜のともだち』では、作家としての豊かな感性を生かし、原作の静けさを深く染み込ませた優しい日本語に定評があります
おすすめ対象年齢
眠れない子にもおすすめなのは、3〜7歳くらいが目安。夜の不安に寄り添うテーマで、幼児期の夜間トラブルにぴったり。大判で絵がじっくり楽しめるので、小学生くらいまで幅広く安心して読めます。読み聞かせなら「ちょっと怖いけど大丈夫」という心の整理もできるし、親子の夜の静かな時間にも合う温かい一冊です。
レビュー
この絵本、昼とは違う夜の世界をまるで絵画みたいに体験できてワクワクしました。ネズミと一緒に階段、本棚、リビングなどを巡るたびに、暗がりの中にふっと希望が灯る感じがして、まるでガスパールと一緒に冒険してるみたい。特に、怖がりペンギンに出会う場面は、夜だけの特別なお友達みたいでほっこりします。西加奈子さんの訳も「怖いけどちょっと楽しみ」が伝わる自然な文で、親子で声に出すと夜の静けさも心地よく感じるのがいい。夜がちょっと苦手な子も、「明日まで一緒にいようね」って言われてるような優しさがあって、ページを閉じると心が安心に包まれます。