『ババールのこどもたち』(原題:Babar en famille)は、ジャン・ド・ブリュノフ作・絵、やがわすみこさん訳の温かいファミリー絵本です。フランスでは1938年に出版され、日本語版は評論社から1975年に初版が刊行されました。物語は、セレスト王妃が三つ子を出産し、ババールがパパとして奮闘するお話。子育ての喜びや大変さ、ピクニックでのハプニングから、川で子象アレクサンドルが流されるハラハラ展開まで、笑いとドキドキがたっぷり。ブリュノフの柔らかな線画とやがわさんの優しい日本語訳が相性バッチリで、家族の絆がほっこり伝わってきます。
略歴
ジャン・ド・ブリュノフ
ジャン・ド・ブリュノフ(Jean de Brunhoff、1899年 – 1937年)は、フランス・パリ生まれの画家であり、「ぞうのババール」シリーズの生みの親です。もともとは画家として活動していましたが、妻セシルが子どもたちに話していた象の物語をもとに、ジャンが絵をつけて絵本化したのがきっかけで、1931年に『ぞうのババール』第1作を出版。洗練されたイラストと物語は瞬く間に人気となり、フランス国内外で愛されるシリーズとなりました。わずか37歳で永眠されたものの、息子ローランがその後を継ぎ、シリーズは今も続いています。優れたビジュアルと物語性で、絵本界に大きな足跡を残した作家です。
やがわすみこ(訳)
やがわすみこ(1930年 – 2002年)は、東京出身の詩人・小説家・翻訳家です。東京女子大・学習院大卒業後、岩波書店の校正者を経て、英仏独文学の翻訳家として活躍しました。詩集『ことばの国のアリス』や小説『失われた庭』などの著作があり、児童書やファンタジーの名訳者としても名を馳せました。また、「ぞうのババール」シリーズを含む多数の絵本の訳を手がけました。その豊かな文学的背景と確かな翻訳技術によって、日本の児童文学界に大きな影響を残しています。
おすすめ対象年齢
この絵本は4〜7歳の子どもにぴったり!子育てや兄弟関係を描いた設定が共感を呼び、会話も多めで読み聞かせにも◎。30〜40ページほどのボリュームながら、絵が豊かなので視覚的にも楽しめ、低学年からじっくり一人読みを始めるのにも良いバランスです。
レビュー
三つ子の誕生から始まるババールファミリーのストーリーは、心にじんわり残るあたたかさが魅力的!ババールが一生懸命に赤ちゃん象たちと向き合う姿を見ると、パパとしての愛情が伝わってきます。ピクニックでのハプニングや川でアレクサンドルを助けるシーンにはドキドキと安心が入り混じり、子どもたちも夢中になるはず。結構多めのページの中に家族の喜びと成長がぎゅっと詰まっていて、読むたび温かい気持ちに。「家族っていいな」と思えるお話なので、読み聞かせにも、自分でじっくり読むのにもおすすめ。やがわすみこさんの訳も自然で心地よく、親子で共感できるポイントがたくさんあります。