かばくん/岸田 衿子

『かばくん』は、作・岸田衿子さん、絵・中谷千代子さんによる名作絵本で、1966年に刊行されました。舞台は動物園。そこにいるカバのお父さんと、ちいさなカバの子、そしてカメの子が登場し、のんびり気ままな一日を過ごします。とくに何かが起こるわけではないけれど、静かで心地よい時間が丁寧に描かれていて、読み終えるとほっとする作品。詩的な文章と、やわらかなタッチのイラストが調和し、親子で何度でも読みたくなる絵本です。

略歴

岸田衿子

岸田 衿子(きしだ えりこ、1929年 – 2011年)は東京生まれの詩人・児童文学作家・翻訳家。東京芸術大学油絵卒後、絵本や児童書を多数執筆・翻訳し、アニメ『赤毛のアン』や『フランダースの犬』などTV主題歌の作詞も手がけました 。1966年の『かばくん』(中谷千代子絵)でサンケイ児童出版文化賞受賞。1971年に訳した『どろんここぶた』をはじめ、『はろるどのふしぎなぼうけん』『ルシールはうま』などローベル作品の翻訳でも知られています。詩作にも優れ、生涯を通じて子どもたちと詩・物語をつないできた存在です。

中谷千代子(絵)

中谷千代子(なかたに・ちよこ)さんは、1930年、東京府(現・東京都)高樹町に生まれました。東京府立第十一高等女学校を経て、1952年に東京美術学校(現・東京藝術大学)油絵科を卒業。学生時代に梅原龍三郎に師事し、詩人・岸田衿子さんとは学び舎の同期だったそうです。1957年ごろから絵本制作に興味を持ち、1960年に『ジオジオのかんむり』でデビュー。以降『かばくん』『かばくんのふね』など、動物が主役の絵本を多数手がけ、講談社出版文化賞や産経児童出版文化賞などを受賞しました。1963年には夫・貞彦さんとともにフランスへ渡り、絵本制作の研鑽を積みます。1981年に永眠されました 。

おすすめ対象年齢

『かばくん』は、特に3~5歳の幼児期にぴったりの絵本です。短くてリズミカルな文章は、小さな子どもでも集中して聞ける長さ。内容も身近で安心感があり、読み聞かせデビューにもおすすめ。ひらがな中心なので、文字に興味を持ち始めた子どもにもぴったりです。

レビュー

読んでいるだけで、かばくんののんびりした時間に自分も入り込んでしまうような感覚になります。特別な事件も起きず、ただただやさしい世界が広がっていて、大人が読んでも癒されます。岸田衿子さんの詩のような文章と、中谷さんのあたたかな絵がぴったり合っていて、読み終わったあと、心がふわっと軽くなるような気がしました。ちょっと疲れたときにもおすすめしたい、静かだけど味わい深い絵本です。