『こんやは はなびたいかい』は、作:きしだえりこさん、絵:あべはるえさんによる、夏の夜のとっておきの一冊です。2004年に福音館書店から刊行されました。いろいろな動物たちが、空に広がる花火を見上げながら、それぞれの場所で静かに花火大会を楽しんでいます。ライオン、カバ、ゾウなどの表情がとても豊かで、読んでいるこちらまで胸が高鳴ります。やさしい語り口と、ぬくもりのある絵が、幻想的な夏の夜をやさしく包み込んでくれるような絵本です。
略歴
岸田衿子
岸田 衿子(きしだ えりこ、1929年 – 2011年)は東京生まれの詩人・児童文学作家・翻訳家。東京芸術大学油絵卒後、絵本や児童書を多数執筆・翻訳し、アニメ『赤毛のアン』や『フランダースの犬』などTV主題歌の作詞も手がけました 。1966年の『かばくん』(中谷千代子絵)でサンケイ児童出版文化賞受賞。1971年に訳した『どろんここぶた』をはじめ、『はろるどのふしぎなぼうけん』『ルシールはうま』などローベル作品の翻訳でも知られています。詩作にも優れ、生涯を通じて子どもたちと詩・物語をつないできた存在です。
あべはるえ(絵)
あべはるえさんは、日本のイラストレーター&絵本作家。自然科学者としての立場を活かし、動物たちの生態や表情を丁寧に描くのが特徴です。代表作に『こんやは はなびたいかい』があります。この絵本では、動物園の動物たちが花火を見上げるユニークな情景を、科学的な観察眼とあたたかいタッチで表現し、読者から高く評価されています。もともとは自然科学系の研究者だとされ、『こんやは はなびたいかい』では科学的視点が反映されており、動物の反応にリアリティがあるとの声も。今後も動植物や自然を題材とした絵本が期待される、注目の作家です。
おすすめ対象年齢
対象年齢はおおよそ3歳〜5歳くらいがおすすめです。短めの文章とリズムのよい展開で、小さな子どもにも分かりやすく、読み聞かせにもぴったり。動物や花火といった子どもが大好きなモチーフが盛りだくさんなので、季節感を感じながら楽しく読める一冊です。夏の夜のおやすみ前の一冊にもおすすめです。
レビュー
この絵本は、動物達の一夜が舞台。普段は見られる側のはずの動物たちが、花火を見上げてわくわくしている様子がなんとも可愛らしくて、ちょっと不思議な気持ちになります。あべはるえさんの絵はとてもやさしく、動物たちの表情やしぐさが細やかに描かれていて、静かな夜の高揚感が伝わってきます。派手ではないけれど、じんわり心に残る“夏の夜の物語”。読み終えたあと、少しだけ夜の動物園をのぞいてみたくなりました。大人が読んでも癒される一冊です。