うさこちゃんとうみ/ディック・ブルーナ

『うさこちゃんとうみ』は、オランダの絵本作家ディック・ブルーナによる、うさこちゃんシリーズの中でも夏にぴったりの一冊。原作タイトルは『nijntje aan zee』で、1963年にオランダで出版され、日本語版は1964年に刊行されました(訳:いしいももこ)。うさこちゃんが家族と一緒に海におでかけし、砂遊びをしたり、波とたわむれたりする様子が、やさしいリズムの文章と明快なイラストで描かれています。夏のワクワク感がたっぷりつまった絵本です。

略歴

ディック・ブルーナ

ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927年〜2017年)は、オランダ・ユトレヒト生まれの絵本作家・グラフィックデザイナー。父の出版社でデザインの仕事をするかたわら、1953年ごろから絵本制作を開始。代表作は「うさこちゃん」シリーズで、世界的に知られるキャラクター「ミッフィー(nijntje)」を誕生させました。ミニマルな線と明快な色づかいで、子どもから大人まで長く愛されています。著作は50か国以上で翻訳され、総発行部数は8500万部以上にのぼります。

石井桃子(訳)

石井桃子(いしいももこ、1907 – 2008)さんは、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や「ピーターラビット」シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。彼女の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。

おすすめ対象年齢

『うさこちゃんとうみ』は、0歳〜4歳くらいのお子さんにおすすめです。文が短く、繰り返しやリズムのある語り口なので、読み聞かせデビューにもぴったり。明るい色づかいやはっきりした線が、視覚の発達をうながしながら、うみへの好奇心も育ててくれます。夏の絵本として季節読みも◎。

レビュー

この絵本を読むと、子どもの頃に家族と行った海の思い出がふわっとよみがえってきます。うさこちゃんが海で遊ぶ姿は本当に楽しそうで、読んでいるこちらまで夏の風を感じるよう。シンプルな絵なのに、波や砂の感じがちゃんと伝わるのがすごい!色づかいも鮮やかで、ページをめくるたびに気分が明るくなります。子どもにとって初めての「海」を想像するのにもぴったりで、夏の読み聞かせには定番にしたい一冊です。