『うさこちゃんとじてんしゃ』は、ディック・ブルーナが1982年にオランダで発表した Nijntje op de fiets の日本語版。うさこちゃんが「おおきくなったら青い自転車で遠くまで行こう」と夢をふくらませ、森や丘を越えて大好きなおばさんの家へ向かう想像の旅を描きます。日本語版は1984年に福音館書店より刊行(訳:まつおかきょうこ)。シンプルな線と鮮やかな色彩、詩のリズムが心地よく、幼い読者の“はじめての冒険心”にそっと火をつける一冊です。
略歴
ディック・ブルーナ
ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927年〜2017年)は、オランダ・ユトレヒト生まれの絵本作家・グラフィックデザイナー。父の出版社でデザインの仕事をするかたわら、1953年ごろから絵本制作を開始。代表作は「うさこちゃん」シリーズで、世界的に知られるキャラクター「ミッフィー(nijntje)」を誕生させました。ミニマルな線と明快な色づかいで、子どもから大人まで長く愛されています。著作は50か国以上で翻訳され、総発行部数は8500万部以上にのぼります。
松岡 享子(訳)
松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。
おすすめ対象年齢
公式には「読んであげるなら3歳から、自分で読むなら小学低学年から」。文章が短くリズムも軽快なので2歳頃からの読み聞かせにも十分対応します。自転車やお出かけに興味を持ち始めた子どもが、ページをめくるたびに「次はどこへ行くの?」と想像を広げられる構成です。
レビュー
読みながら、想像の旅っていうことを忘れてしまいそう。まるでハンドルを握って風を切るようなワクワク感が味わえます。坂道をよいしょと登ったり、雨に降られてもへこたれずにペダルをこぎ続けるうさこちゃんの姿が、子どもに「挑戦って楽しい」と語りかけてくれるよう。クッキーの焼ける匂いが漂うおばさんの家に着いたときの安心感も絶妙で、冒険と帰巣本能が一冊にギュッ。読後には親子そろって「今度は本当に自転車で行ってみようか」と外へ出たくなる、元気をくれる絵本です。