『うさこちゃんときゃらめる』は、ディック・ブルーナが2001年に発表した原題 Nijntje is stout(オランダ)をもとにした絵本。ある日うさこちゃんが母親と買い物中にお店のキャラメルをこっそりポケットに入れてしまう、というストーリーです。読み進めると、夜になって罪悪感にさいなまれるうさこちゃんが、翌朝勇気を出して母親に打ち明け、一緒にお店へ返しに行くという展開に。日本語版は2009年に刊行、訳はまつおかきょうこさん。
略歴
ディック・ブルーナ
ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927年〜2017年)は、オランダ・ユトレヒト生まれの絵本作家・グラフィックデザイナー。父の出版社でデザインの仕事をするかたわら、1953年ごろから絵本制作を開始。代表作は「うさこちゃん」シリーズで、世界的に知られるキャラクター「ミッフィー(nijntje)」を誕生させました。ミニマルな線と明快な色づかいで、子どもから大人まで長く愛されています。著作は50か国以上で翻訳され、総発行部数は8500万部以上にのぼります。
松岡 享子(訳)
松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。
おすすめ対象年齢
出版社の案内では、対象年齢は4歳から。善悪の判断が育まれる時期にぴったりで、「やってしまった後、どう行動する?」「正直ってどういうこと?」といったテーマを自然と考えるきっかけになります。大人が読み聞かせながら道徳的メッセージをやさしく伝えるにも適した一冊です 。
レビュー
うさこちゃんがキャラメルを”ちょっとだけ”ポケットに入れてしまう。そして夜になって眠れず、朝になって母親に真実を話しに行く。その流れに読んでいる私まで胸がぎゅっと締めつけられました。ブルーナさんの線はシンプルなのに、表情だけでうさこちゃんの後悔が伝わってくる!母親が「なんて悪いことをしたの」と叱る場面も、「あなたが悪い子」ではなく「行為が悪い」ときちんと言葉を分けて伝える点がすごくいいです。最後にキャラメルをお店に返すという過程が描かれていないところも、子どもの視点に委ねられていて深い余韻があります。読み終えたあと、「謝る勇気って大事だね」と親子で話したくなる、ズシンと響く力作です。