うさこちゃんはじょおうさま/ディック・ブルーナ

『うさこちゃんはじょおうさま』は、ディック・ブルーナ作、オランダ語原題は Koningin Nijntje(2007年発行)。ある日、うさこちゃんはウサギの国で女王になるというすてきな夢を見ます。大きな王冠をかぶり、だれからも好かれる女王様…。うさこちゃんのやさしさと想像力がたっぷり詰まった、夢見る楽しさを描いた一冊です。日本語版は2009年に刊行、訳はまつおかきょうこさん。シンプルな線と色彩で広がる夢の世界は、子どもたちの想像力をふくらませてくれます。

略歴

ディック・ブルーナ

ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927年〜2017年)は、オランダ・ユトレヒト生まれの絵本作家・グラフィックデザイナー。父の出版社でデザインの仕事をするかたわら、1953年ごろから絵本制作を開始。代表作は「うさこちゃん」シリーズで、世界的に知られるキャラクター「ミッフィー(nijntje)」を誕生させました。ミニマルな線と明快な色づかいで、子どもから大人まで長く愛されています。著作は50か国以上で翻訳され、総発行部数は8500万部以上にのぼります。

松岡 享子(訳)

松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。

おすすめ対象年齢

この絵本は、3歳ごろからの子どもたちにぴったりの一冊です。お姫さまや王さまごっこが大好きな年ごろの子にとって、「じょおうさまになる」という うさこちゃんの夢は、とても共感できるはず。ストーリーは短くシンプルなので、小さなお子さんにも理解しやすく、読み聞かせにもぴったり。夢と現実を行き来しながら、自分の役割を想像する楽しさが自然と育まれます。

レビュー

うさこちゃんが女王さまになる夢を見て、「わたしだったらこうする!」と考える姿がとてもほほえましく、子どもらしい想像力があふれた一冊です。大きな王冠をかぶり、だれからも好かれ、うれしいときもかなしいときも国民に寄りそう女王様…。と、ただ偉そうにするのではなく、やさしさや気配りを大切にしているところがとても印象的でした。読む側も「こんなふうに人にやさしくできたらいいな」と思わせてくれるような内容です。夢の世界をブルーナらしいカラフルでシンプルな絵で彩ることで、想像の楽しさがより引き立っていました。読後はなんだか誇らしい気持ちになれる、元気をくれる一冊です。