うさこちゃん おばけになる/ディック・ブルーナ

『うさこちゃん おばけになる』は、オランダの絵本作家ディック・ブルーナによる作品。原題は Het spook Nijntje(2010年、オランダ発行)。ある日うさこちゃんは、白いシーツに穴をあけて“おばけ”に変身!「こわいぞ〜!」と友だちをびっくりさせて楽しみますが、やりすぎてふわこおばさんまで驚かせてしまいます。ブルーナのシンプルでカラフルな絵と、テンポのよい文が組み合わさって、おばけごっこのワクワクとちょっぴりのドキドキを子どもの視点で描いています。日本語版は2010年に福音館書店から出版、訳はまつおかきょうこさんです。

略歴

ディック・ブルーナ

ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927年〜2017年)は、オランダ・ユトレヒト生まれの絵本作家・グラフィックデザイナー。父の出版社でデザインの仕事をするかたわら、1953年ごろから絵本制作を開始。代表作は「うさこちゃん」シリーズで、世界的に知られるキャラクター「ミッフィー(nijntje)」を誕生させました。ミニマルな線と明快な色づかいで、子どもから大人まで長く愛されています。著作は50か国以上で翻訳され、総発行部数は8500万部以上にのぼります。

松岡 享子(訳)

松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。

おすすめ対象年齢

対象年齢は4歳から、自分で読むなら小学低学年向けとのこと(福音館の案内より)。3歳頃からでもOKで、シーツをかぶって“おばけごっこ”を楽しむ子どもにも響きやすい内容です。いたずらやちょっと怖い雰囲気をワクワクしながら味わえる、キッズ向けのわかりやすい絵本です。

レビュー

うさこちゃんがシーツに穴をあけて“おばけ”に変身するシーンは、まるで子どもの日常にある遊びそのもの。最初は「こわーいぞ!」と張り切っていたけれど、ふわこおばさんまで驚かせてしまい、「そんなつもりじゃなかったのに」と気づいてやめるところが、とてもやさしいうさこちゃんらしくて心に残ります。ちょっとしたイタズラも、相手の気持ちを考えることの大切さを自然に伝えてくれる、温かいお話です。ブルーナのシンプルで力強い線と色づかいが、いたずら心と反省の気持ちの両方を、子どもたちにやさしく届けてくれます。読み終わったあと、親子で「びっくりさせすぎちゃダメだね」と話せるような1冊です。