ちいさな かいじゅう モッタ/イヴォンヌ・ヤハテンベルフ

ある日、末っ子のモッタは思いました。「ぼくもこわーいかいじゅうになりたい!」でも、兄ちゃんたちからは「かわいい!」なんて言われてばっかり。そんなのイヤだ!とモッタは森に冒険に出て、自分なりの“こわい”を探します。いろんなことを試してみた結果…?
この絵本は、オランダの作家イヴォンヌ・ヤハテンベルフが描いた、ちょっぴり不器用だけど一生けんめいなモッタの成長ものがたり。原題は『Klein monster Motta』、オランダでは2015年、日本語版は同年に福音館書店から発売。シンプルだけど表情豊かな絵と、モッタのがんばりがすごくかわいくて、子どもも大人も応援したくなる1冊です!

略歴

イヴォンヌ・ヤハテンベルフ

イヴォンヌ・ヤハテンベルフ(Yvonne Jagtenberg)はオランダ南部ティルブルフ出身。アルネム芸術学校を卒業後、絵本作家として活動を開始し、2001年に『とくべつないちにち』(Een bijzondere dag)、2002年に『ぼくのウサギ』(Mijn konijn)を発表。オランダ国内の賞を多数受賞し、2006年には『とくべつないちにち』が全国学校読書感想文コンクールの課題図書(低学年部門)に選ばれました。作品は世界各国で翻訳出版され、子ども用家具やテキスタイルのデザイン、映画・ドキュメンタリー脚本執筆まで手がける多才ぶりも注目されています。

野坂 悦子(訳)

野坂悦子(のざかえつこ)さんは1959年東京都生まれで、早稲田大学英文学科卒。1985〜90年、オランダとフランスに暮らし現地で語学と文化を吸収。1989年に『レナレナ』で翻訳家デビューし、本格的にオランダ語絵本の翻訳を開始。その後、オランダ語を中心に英語・フランス語の児童書・絵本を数多く訳し、2003年には『おじいちゃんわすれないよ』で産経児童出版文化賞大賞を受賞。さらに「紙芝居文化の会」設立に参加し、海外で紙芝居を紹介する講座も手がけるなど、翻訳だけでなく日本の絵本文化を世界へ広げる活動にも情熱を注いでいます。

おすすめ対象年齢

福音館書店公式では「読んであげるなら3歳から、自分で読むなら4~5歳から」が目安とされており、イラストの視覚的なアプローチや文章の語り口が、この年齢層にぴったりです。特に末っ子や怪獣ごっこが好きな子には「あるある」が伝わりやすく、想像力と共感が湧きやすい内容です。

レビュー

この絵本、モッタの「かわいがられる悔しさ」と「自ら試して突破する姿勢」がめちゃくちゃ愛おしかったです。鉛筆+墨のシンプルな線で描かれる怪獣たちの表情ひとつひとつに、感情の振れ幅が感じられてグッと来ました。特に終盤、森で大きな“怖いもの”に出会い、そこをうまく利用して兄たちを驚かせる展開には、涙が出るほどスッキリ&痛快!「小さくても知恵と勇気で」って、子どもだけでなく大人にも深い共感とメッセージをくれる一冊。個人的には末っ子としての切実な感情が胸に刺さり、自分も“モッタ”だった頃を思い出しました。日常にちょっとした勇気が欲しい時に、そっと背中を押してくれるそんな絵本です。