だれがいちばん? がんばれ、ヘルマン!/イヴォンヌ・ヤハテンベルフ

『だれがいちばん? がんばれ、ヘルマン!』は2019年にオランダ(Gottmer社)で初版が刊行され、日本語版は野坂悦子さん訳で、講談社より2021年に発売されました。主人公のヘルマンは、マイペースで泥んこ大好きな黒豚。ところが周りのニワトリ一家が「誰が一番?」って騒ぎ出し、つい巻き込まれて大レースに参加しちゃいます。テンポよく進む展開とほどよい緊張感、水彩風のあたたかい絵からは、ヘルマンの心の動きが自然に伝わってきます。一見コミカルだけど、実は「勝ち負けより大事なのは自分らしさ」っていう核心をくすぐる一冊です。大人もハッと心が軽くなる感じ、子どもでも「がんばり」「友達との付き合い」など考え始めるのにぴったり。

略歴

イヴォンヌ・ヤハテンベルフ

イヴォンヌ・ヤハテンベルフ(Yvonne Jagtenberg)はオランダ南部ティルブルフ出身。アルネム芸術学校を卒業後、絵本作家として活動を開始し、2001年に『とくべつないちにち』(Een bijzondere dag)、2002年に『ぼくのウサギ』(Mijn konijn)を発表。オランダ国内の賞を多数受賞し、2006年には『とくべつないちにち』が全国学校読書感想文コンクールの課題図書(低学年部門)に選ばれました。作品は世界各国で翻訳出版され、子ども用家具やテキスタイルのデザイン、映画・ドキュメンタリー脚本執筆まで手がける多才ぶりも注目されています。

野坂 悦子(訳)

野坂悦子(のざかえつこ)さんは1959年東京都生まれで、早稲田大学英文学科卒。1985〜90年、オランダとフランスに暮らし現地で語学と文化を吸収。1989年に『レナレナ』で翻訳家デビューし、本格的にオランダ語絵本の翻訳を開始。その後、オランダ語を中心に英語・フランス語の児童書・絵本を数多く訳し、2003年には『おじいちゃんわすれないよ』で産経児童出版文化賞大賞を受賞。さらに「紙芝居文化の会」設立に参加し、海外で紙芝居を紹介する講座も手がけるなど、翻訳だけでなく日本の絵本文化を世界へ広げる活動にも情熱を注いでいます。

おすすめ対象年齢

対象は4〜6歳(幼稚園〜小学校低学年)。ストーリー展開が自然で水彩タッチのやさしい絵柄、「勝ち負け」「自分らしさ」といったテーマもこの年頃の子にぴったり。親子で読むことで競争心の意味や大切さについて、自然に会話を広げられます。

レビュー

この絵本、読んだあとすごく心があったかくなりました。ヘルマンって、ちょっとぼーっとしてるけど素直でかわいい! 周りに「勝ちたい!」ってガツガツしてる子がいると、自分ものんびりしてちゃダメなのかな…って思っちゃうけど、ヘルマンはヘルマンらしくがんばるんです。その姿がめっちゃいい。絵もふんわりしてて、なんか本当に楽しそう! 子どもにも「自分のペースでいいんだよ」って伝わるし、大人にも「ムリして誰かに勝たなくてもいいんだ」って優しく教えてくれる感じ。読んだあと、ヘルマンみたいに深呼吸したくなる絵本です。