いじわるなないしょオバケ/ティエリー・ロブレヒト

ちょっとした“ないしょ”が、どんどんふくらんでいく…そんな子どもの気持ちを描いたベルギー発の絵本『いじわるなないしょオバケ』。作:ティエリー・ロブレヒト、絵:フィリップ・ホーセンス。原題は『Sarah en haar spookjes』で、2006年にベルギーの出版社Clavisから刊行、日本語版は2009年に文溪堂から出版されました。サラがついた小さなウソが、口から“オバケ”になって飛び出し、あっという間にいっぱいに…。隠し事のもやもやをユーモラスに描きつつ、正直に話すことの大切さをやさしく教えてくれるストーリー。絵もかわいくて、怖すぎないのがいい感じ!親子で気持ちを話し合うきっかけになる一冊です。

略歴

ティエリー・ロブレヒト

ティエリー・ロブレヒト(Thierry Robberecht)は1960年、ベルギー・ブリュッセル生まれ。スケッチや歌詞、短編からスタートし、1993年にはフランス語圏放送の創作コンクールで賞を受賞(作品未邦訳)。1997年以降、児童書や青春小説を中心とした作品を多数発表。漫画の脚本家としても活躍し、バンド・デシネ作品『La Smala』などを執筆。子ども向けイラスト本は、フランス語圏各出版社から刊行され、アメリカ、ドイツ、韓国、日本でも翻訳されています。現在もブリュッセル在住で、幅広いジャンルで創作を続ける才人です。

フィリップ・ホーセンス(絵)

フィリップ・ホーセンス(Philippe Goossens)は1963年生まれ、ブリュッセルの聖ルカ美術学院でコミックを学んだベルギー出身の画家です。子ども向け絵本の挿絵を数多く手がけるほか、広告・宣伝イラストやアニメーション制作にも関わっています。彼の描くキャラクターや背景は、まるで人形劇のセットのように温かみと遊び心があり、子どもも大人も魅了。『いじわるなないしょオバケ』では、その個性的な画風が「ないしょオバケ」の愛らしさと不気味さを絶妙に演出しており、作品の魅力をぐっと引き立てています

野坂 悦子(訳)

野坂悦子(のざかえつこ)さんは1959年東京都生まれで、早稲田大学英文学科卒。1985〜90年、オランダとフランスに暮らし現地で語学と文化を吸収。1989年に『レナレナ』で翻訳家デビューし、本格的にオランダ語絵本の翻訳を開始。その後、オランダ語を中心に英語・フランス語の児童書・絵本を数多く訳し、2003年には『おじいちゃんわすれないよ』で産経児童出版文化賞大賞を受賞。さらに「紙芝居文化の会」設立に参加し、海外で紙芝居を紹介する講座も手がけるなど、翻訳だけでなく日本の絵本文化を世界へ広げる活動にも情熱を注いでいます。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象は主に3~5歳くらいの低年齢児。シンプルな文章で構成され、幼児の「嘘をつく/隠し事をする」心の葛藤を視覚化。オバケの出現による「隠し事の可視化」が幼い読者にわかりやすく、親子の読み聞かせや初めての一人読み(自分読み)にもぴったりです。

レビュー

この絵本、一見「怖かわいい」オバケが出てきますが、実はとても優しいメッセージが込められていてすごく温かい気持ちになります。オバケのデザインも、派手すぎず、それでいて存在感があってユーモラス。子ども特有の恥ずかしさや申し訳なさを、見事に“オバケ”という形で表現していて、共感度が高いです。さらに、最後に正直に打ち明けてオバケが消える描写はスッキリしていて、子どもが安心して「嘘はよくない」と感じられるつくり。親としても「正直であることの大切さ」を柔らかく伝えられる良質な絵本だと思います。読み終わったあと、親子でじんわりとした余韻に浸れる一冊です。