ぞうになったうそ/ティエリー・ロブレヒト

ベルギーの作家ティエリー・ロブレヒトが描く、ちょっとドキッとするでも心に響く絵本『ぞうになったうそ』(原題:Un mensonge gros comme un éléphant)。2022年にベルギー発のパイ・インターナショナルから刊行され、日本語版も同年にふしみみさをさんの翻訳で発売されました。物語は、主人公リュカがついた小さなウソが、ゾウのように心に重くのしかかっていくビジュアルで表現されていて、子どもにも大人にも「ウソするとこんな気持ち?」と心に問いかけます。やがて本当のことを話すことでゾウが消え、心にスッとスペースができる…そんな解放感を、淡い絵と穏やかな語り口で届けてくれます。罪悪感という目に見えない感情を「ゾウ」というわかりやすい存在にすることで、親子の会話を自然に誘う一冊です。

略歴

ティエリー・ロブレヒト

ティエリー・ロブレヒト(Thierry Robberecht)は1960年、ベルギー・ブリュッセル生まれ。スケッチや歌詞、短編からスタートし、1993年にはフランス語圏放送の創作コンクールで賞を受賞(作品未邦訳)。1997年以降、児童書や青春小説を中心とした作品を多数発表。漫画の脚本家としても活躍し、バンド・デシネ作品『La Smala』などを執筆。子ども向けイラスト本は、フランス語圏各出版社から刊行され、アメリカ、ドイツ、韓国、日本でも翻訳されています。現在もブリュッセル在住で、幅広いジャンルで創作を続ける才人です。

エステル・メーンス(絵)

エステル・メーンス(Estelle Meens)はベルギー出身のイラストレーター。リエージュのサン・リュック美術学校でイラストレーションを専攻し、子ども向け絵本を中心に活動しています。絵本『ぞうになったうそ』では、淡くユーモアのある水彩タッチで、ウソの重さを「ゾウ」の造形で表現。彼女の描くキャラクターはどこか温かく、ユーモラスで、子どもの気持ちに寄り添う力があります。広告や教育関連のイラスト制作にも携わり、色彩のバランスや表情のデザインに定評。柔らかな雰囲気の絵が、多くの国内外ファンに支持されています。

ふしみ みさを(訳)

ふしみ みさを(伏見 操)さんは、1970年に埼玉県で生まれ、上智大学文学部フランス文学科を卒業されました。​大学卒業後、洋書絵本の卸会社やラジオ番組制作会社に勤務された後、フリーの翻訳者として活動を開始されました。​初めての訳書は、1999年に出版された『モモ、しゃしんをとる』(ナジャ作・絵/文化出版局)です。​以来、フランス語や英語の児童書を中心に、200冊以上の翻訳を手がけておられます。​代表的な訳書には、『うんちっち』(あすなろ書房)、『どうぶつにふくをきせてはいけません』(朔北社)、『トラのじゅうたんになりたかったトラ』(岩波書店)などがあります。​現在はフランスと日本を行き来しながら、翻訳活動を続けておられます。​また、エッセイの執筆など、多方面で活躍されています。

おすすめ対象年齢

『ぞうになったうそ』の対象年齢は、主に3〜7歳くらいの幼児から低学年向け。視覚的にウソの重みを伝える構成です。文字量は控えめで読み聞かせにもぴったり。ウソの心の動きを「ゾウ」という形で見えるようにしており、幼い子でも理解しやすい内容。親子で「ウソってどういう気持ち?」というやり取りをするのにとても適した優しい絵本です。

レビュー

この絵本、見た目はかわいいけどテーマは意外と深い!リュカがついた“ちいさなウソ”が、どんどん重くなってゾウみたいに心にのしかかる様子が、とてもリアルで共感できました。特にウソをついたあとのモヤモヤ感や、だんだん言い出せなくなっていく気持ちが、絵と言葉でしっかり伝わってきます。子どもに「ウソをついたらどうなるの?」って教えるのにぴったりな内容だし、大人が読んでもハッとする部分があるかも。最後に正直になって心が軽くなるところでは、読みながら思わず笑顔に。やさしく背中を押してくれる、そんな絵本です。