ぜったいたべないからね/ローレン・チャイルド

ローレン・チャイルドの『ぜったいたべないからね』は、英語の原題『I Will Not Ever Never Eat a Tomato』として2000年にイギリスで発行されました。この絵本は、食べ物に対して強いこだわりを持つ主人公の女の子、ローラと彼女のお兄さんであるチャーリーとのやり取りが描かれています。ローラはトマトをはじめ、いくつかの食べ物を「絶対に食べない!」と断固拒否しますが、お兄さんのチャーリーがユニークな方法で彼女を説得し、最終的には楽しい形で食べ物に挑戦することになります。楽しいストーリー展開と、チャイルド独特のポップでカラフルなイラストが魅力で、子どもたちに食べ物に対する前向きな気持ちを引き出すきっかけになる一冊です。

ローレン・チャイルドの略歴

ローレン・チャイルド(Lauren Child,1965生まれ)は、イギリスの著名な絵本作家であり、イラストレーターとしても活躍しています。彼女は3人姉妹の真ん中でイギリス・ウィルトシャーで育ちました、大学で美術やデザインを学んだ後、インテリアデザインやアニメーションの分野で働きました。しかし、その後は絵本制作に力を入れ、自身のユニークな作風で注目を集めました。

彼女の代表作である『チャーリーとローラ(Charlie and Lola)』シリーズは、子どもの独特な感性や日常の小さな出来事を楽しく描き、子どもから大人まで幅広い読者に愛されています。このシリーズはテレビアニメ化され、さらに人気を博しました。『ぜったいたべないからね(I Will Not Ever Never Eat a Tomato)』は、チャーリーとローラシリーズの最初の作品で、2000年に発表されると同時に話題となり、2001年にはケイト・グリーナウェイ賞を受賞しています。

彼女の作風は、コラージュや色鮮やかなデザインが特徴で、子どもたちの視点や心理を見事に表現しており、読者に楽しさと共感を与えます。また、ローレン・チャイルドは「クラリス・ビーン(Clarice Bean)」や「ルビー・レッドフォート(Ruby Redfort)」シリーズといった他の作品も執筆し、幅広い層に支持されています。彼女の作品は、世界中で翻訳され、国際的にも高く評価されています。

おすすめ対象年齢

『ぜったいたべないからね』は、一般的に3歳から7歳の子どもを対象とした絵本です。この年齢層の子どもたちは、食べ物に関する興味や嫌いなものが顕著になり始める時期で、ローラのように「食べたくない!」と主張する場面も珍しくありません。そのため、本書は食べ物への偏見や挑戦心、ユニークな解決策を楽しく伝え、子どもたちが新しいことに挑戦する気持ちを育むのに最適です。

また、チャーリーとローラの兄妹関係も、兄や姉に影響を受けやすい小さな子どもたちに共感を呼びます。チャーリーがユーモアたっぷりに食べ物を紹介する場面は、読者の子どもたちにも楽しさと興味を喚起するでしょう。親子で読むのにもぴったりなこの作品は、楽しいやり取りとかわいらしいイラストを通して、自然に新しい食材に触れる気持ちを引き出し、絵本を通じた学びのひとときを提供します。

レビュー

『ぜったいたべないからね』は、子どもの食べ物に対する好き嫌いや偏見をユーモラスに描いており、子どもたちの純粋で頑固な一面をリアルに表現しています。

お兄さんのチャーリーは、妹のローラに食べ物を食べさせるために工夫を凝らし、想像力豊かな方法で彼女の興味を引き出します場面がとても面白いのです。たとえば、ニンジンを「えだみかん」、グリーンピースを「あめだまみどり」と呼び、マッシュポテトを「くもぐちゃらん」と・・・新しい視点で食べ物を紹介します。このような発想は、子どもの想像力と好奇心を刺激しるのでしょうね。

絵本全体を通じて、チャイルドの独特なイラストレーションが際立っています。コラージュや手描きの文字を組み合わせたカラフルでポップなデザインは、視覚的にも子どもたちの興味を引きつけます。ページごとに異なるレイアウトや色使いは、読者を飽きさせず、物語の世界に引き込む力があります。
この作品は、食事という日常的なテーマを取り上げながらも、兄妹の絆やコミュニケーションの重要性を深く描いています。チャーリーの優しさと機転は、妹への愛情だけでなく、問題解決のための創造的なアプローチとしても評価できます。親子でこの絵本を読むことで、食べ物に対する新しい見方や、家族間のコミュニケーションのヒントを得ることができるでしょう。
総じて、『ぜったいたべないからね』は、子どもの視点に立った温かみのある物語であり、読者に笑顔と共感をもたらす一冊です。食べ物の好き嫌いに悩む家庭や、子どもの想像力を育てたいと考える方々にとって、ぜひ手に取っていただきたい作品です。

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