とべ!ちいさいプロペラき/小風 さち

『とべ!ちいさいプロペラき』(文:小風さち/絵:山本忠敬)は、2000年に福音館書店から出版された、飛行機好きの子どもにぴったりの絵本です。物語は、小さなプロペラ機が初めて飛ぶその日、大きなジェット機に励まされながら勇気を出して空へ飛び立つという、シンプルながら胸が熱くなるストーリー。写実的でありながら温かみのある山本忠敬さんのイラストは、飛行機の細部まで丁寧に描かれていて、見ているだけでもワクワクします。「小さくてもがんばれる!」というテーマが、子どもたちの心を元気づけてくれる一冊です。読み聞かせにもおすすめですよ。

略歴

小風 さち

小風さち(こかぜさち,1955年東京生まれ)は、1977〜87年にイギリス・ロンドン郊外で暮らし、帰国後に絵本作家として活躍。代表作に「わにわに」シリーズや『とべ!ちいさいプロペラき』『はちみついろのうま』などがあります。翻訳絵本や児童書の訳書も手がけ、『ゆびぬき小路の秘密』で1994年に野間児童文芸新人賞を受賞。また、福音館書店や講談社などの児童書出版社を中心に精力的に作品を発表し、現在は東京都在住。独特のユーモアとリズムある文章で、子どもの心をつかみ続けています。

山本 忠敬(絵)

山本忠敬(やまもとただよし,1916‑2003)は、東京生まれの挿絵画家・アートディレクター。東京美術学校図案科卒業後、横浜シネマ漫画映画研究所に所属し、アニメーションへ情熱を注ぎました。その後、新潮社の挿絵や週刊誌用カットを手がけつつ、児童書や絵本の挿絵でも名を馳せました。特に乗り物をテーマにした絵本の代表作が多数あり、福音館書店からは『しょうぼうじどうしゃじぷた』『のろまなローラー』などが刊行。『とべ!ちいさいプロペラき』でも、写実的な飛行機の描き込みと、可愛らしさが融合したイラストで大人気です。1941年卒業以降、アニメ会社を経て児童書界へ遺した仕事は膨大で、乗り物絵本の第一人者といえる存在です。

おすすめ対象年齢

対象はおおむね2~5歳ころ。読み聞かせ向けですが、小学校低学年の自分読みもOKです。初めての「飛ぶ」という体験に胸を膨らませる子どもたちにはピッタリ。短くシンプルな文章とリアルな飛行機イラストの組み合わせが、低年齢のお子様にちょうどいい刺激に。特に、親子で「大空ってすごいね!」と感慨を共有できるのが魅力です 。

レビュー

この絵本、大好きです!小さなプロペラ機の緊張感と、ジェット機の優しい励ましの“掛け合い”がすごく心に響きました。絵が写実的ながらキャラクター性もあり、ただの飛行機絵本じゃなく、ちょっとした「生きもの」を見ているような愛しさがあります。読み聞かせでは、エンジン音「ブルン ブルルン!」をマネして子どもも参加できるのが楽しいポイント。最後に飛び立つシーンは、親も「がんばったね!」と一緒に拍手したくなる感動。人生の節目や初めての挑戦を応援するメッセージがぎゅっと詰まっていて、何度読んでもじんわりくる一冊です。