『ぐりとぐら』は、なかがわりえこ作、おおむらゆりこ絵による日本の名作絵本で、1967年1月に初版が刊行されました。
主人公は、野ねずみのぐりとぐらの二匹。彼らが森で見つけた大きな卵を使って、フライパンいっぱいのカステラを作る物語です。調理や分け合う楽しさ、森の仲間との交流を通して、自然と人とのつながりや喜びが描かれています。シンプルながらも温かみのあるイラストと心地よいリズムの文章が、幼い読者から大人まで幅広い世代に愛されています。食べることや仲間との時間を大切にするメッセージが込められた一冊です。
略歴
なかがわ りえこ
なかがわりえこ(中川 李枝子、1935年2月12日生まれ)は、日本を代表する児童文学作家であり、絵本作家としても広く知られています。北海道札幌市に生まれ、幼少期から自然に親しむ環境で育ちました。東京都立高等保母学院(現・都立高等保育学院)卒業し、保育士として働き始めました。この経験が、後の創作活動に大きな影響を与えています。
保育士時代に子どもたちへの読み聞かせや遊びの中で得た知識を活かし、1962年に『いやいやえん』で作家デビュー。1963年には、イラストを実妹の画家・山脇百合子(旧姓・大村)が担当した『ぐりとぐら』を発表し、広く支持を集めました。特に『ぐりとぐら』シリーズは、親しみやすい文章と温かみのある物語が特徴で、世代を超えて愛される作品となっています。
その後も数々の絵本や児童書を手がけ、子どもの目線に寄り添った物語を紡ぎ続けています。『そらいろのたね』『ももいろのきりん』など、多くの作品を発表しました。
また、1988年公開のスタジオジブリの映画『となりのトトロ』では、オープニングテーマ「さんぽ」の作詞を手がけました。作品を通じて、自然や友情、日常の小さな喜びを大切にするメッセージを伝え、多くの人々に影響を与えてきました。
おすすめ対象年齢
中川李枝子さんの『ぐりとぐら』は、3歳から5歳の未就学児を主な対象としている絵本です。この年齢層の子どもたちにとって理解しやすく、楽しめる内容になっていますが、親しみやすいストーリーや可愛らしいイラストから、小学校低学年の子どもたちにも人気があり、幅広い年齢層で愛され続けています。
シンプルなストーリー展開と親しみやすいキャラクターが、言葉や状況を理解し始める子どもたちにとって魅力的であり、親子での読み聞かせにも最適です。また、『ぐりとぐら』は家族や友達と一緒に楽しみを共有する大切さを自然に伝え、友情や協力の大切さを学べるため、読み聞かせや学校での教材としても使用されています。
レビュー
『ぐりとぐら』は、まさに日本の絵本文学の名作で、世代を超えて愛される理由が詰まった一冊だと感じます。この絵本の最大の魅力は、双子の野ねずみ「ぐり」と「ぐら」が、大きな卵を見つけてカステラを作るという、シンプルでいて温かみのある物語です。物語の中で、ぐりとぐらが卵を使ってカステラを作る過程が描かれ、子どもたちが想像力を膨らませながら読める構成になっており、ページをめくるたびにワクワクする展開です。
また、物語の最後にぐりとぐらがカステラを森の仲間たちと分け合うシーンは、友情や共有の喜びを自然に伝えてくれます。ぐりとぐらの楽しげな様子や、森の仲間たちが一緒に喜びを分かち合う場面を通じて、協力することや優しさの大切さを感じさせてくれる点が心に残ります。このようなメッセージが、幼い読者だけでなく大人にとっても心温まるものとして響き、読み聞かせをする親子の絆を深めることにもつながっているのだと思います。
おおむらゆりこさんの描くイラストもまた、物語に生き生きとした色彩と温かみを添えています。細部にわたる愛らしい描写が、ぐりとぐらのキャラクターをさらに魅力的にし、読者が物語の世界に没入しやすくなっていると感じます。たとえば、森の風景やぐりとぐらの表情、カステラができあがるまでの過程の描写がどれも丁寧で、まるで一緒に料理をしているような気持ちになれます。
『ぐりとぐら』は一見シンプルなストーリーながら、温かさや優しさ、協力の大切さといった普遍的なテーマが込められている絵本です。