作・絵:マーカス・フィスター、訳:谷川俊太郎『ゆっくり おやすみ にじいろの さかな』(原題:Schlaf gut, kleiner Regenbogenfisch)は、2012年に講談社から発行されたシリーズ第7作目。今回はにじうおがまだ小さかったころのお話。夜になると不安で眠れず、「おばけうおが来たらどうしよう…」「たこのすみの中で迷子になったら…」と、いろんな心配が頭をよぎります。でも、そんなときはママがやさしく「大丈夫よ」と声をかけてくれて、安心して眠りにつくことができるのです。あたたかい親子のやりとりが、寝かしつけにぴったりな優しい1冊です。
略歴
マーカス・フィスター
マーカス・フィスター(Marcus Pfister)さんは、1960年スイス・ベルン生まれの絵本作家・イラストレーターです。ベルンの美術学校でグラフィックデザインを学び、広告業界を経て絵本の世界へ。1992年に発表した『にじいろのさかな(原題:der regenbogenfisch)』が世界的な大ヒットとなり、現在では50か国以上で翻訳され、多くの子どもたちに愛されています。透明感のある美しいイラストが特徴で、水彩とホイル加工を組み合わせた独自の技法も魅力です。
谷川俊太郎(訳)
谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠されました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。
おすすめ対象年齢
『ゆっくり おやすみ にじいろの さかな』の対象年齢は2歳〜5歳くらい。特に寝る前の読み聞かせにぴったりの絵本で、夜が少しこわいと感じるお子さんにもおすすめです。ママとのやりとりが安心感を与え、穏やかな気持ちで眠りにつける構成になっています。
レビュー
この絵本は、寝かしつけの時間にピッタリのやさしい1冊です。にじうおの「もし〇〇だったらどうしよう?」という不安は、小さな子が夜に感じる気持ちそのもの。そこに寄り添ってくれるママの存在がとてもあたたかくて、読んでいるこちらまでほっとします。谷川俊太郎さんの翻訳もやさしく、声に出して読むと心が落ち着きます。親子でぎゅっとしながら読んであげたい絵本。シリーズの中でも特に癒やされるおやすみ絵本です。