金のりんご/マックス・ボリガー

『金のりんご』は、作:マックス・ボリガー、絵:チェレスティーノ・ピアッティ、訳:いずみちほこさんによるスイス生まれの名作絵本。原題は**「Der goldene Apfel」**で、1970年にスイスで初版発行され、1999年に徳間書店から日本語版が出版されました。深い森の中、一本の大きなりんごの木に黄金のりんごが一つだけ実ります。動物たちはそれぞれ「自分のものだ!」と競い合いますが…。力強いタッチと鮮やかな色彩で、欲や独占、そして真の価値とは何かを描き出す、圧巻の一冊です

略歴

マックス・ボリガー

マックス・ボリガー (Max Bolliger) はスイス出身の絵本作家で、動物や自然をモチーフにした作品で知られています。代表作の『金のりんご』では、動物たちの本能と葛藤を通じて、子どもにも大人にも通じる普遍的なテーマを掘り下げました。数少ないテキストながら絵との高い一体感が魅力で、欧米で長く愛される絵本として評価されています。日本では徳間書店による翻訳出版以降、絵本愛好者の間で語り継がれています 。

チェレスティーノ・ピアッティ(絵)

チェレスティーノ・ピアッティ (Celestino Piatti, 1922–2007) はスイスの著名なグラフィックアーティスト・イラストレーター。ポスターや書籍デザインで高い評価を受け、特にドイツの出版社 dtv の約6,300冊に及ぶ装丁を手がけました。絵本作品でも黒い太線と鮮やかな単色の強いコントラストで幻想性と力強さを両立させ、『金のりんご』でもその独特な画風は物語に深い印象を残します。

いずみ ちほこ(訳)

いずみちほこさんは、ドイツ語圏の絵本や児童文学の翻訳を多数手がける日本の翻訳者。特に、原作の香りやリズムを大切にした自然で読みやすい訳が評価されており、『金のりんご』でもそのセンスが光ります。徳間書店からの翻訳出版により、幅広い年齢層にスイスの絵本文化を伝える役割を果たしました。

おすすめ対象年齢

対象は4〜6歳くらいの子どもが中心ですが、大人にもおすすめです。絵本としてはテキストが少なめで読み聞かせしやすく、色鮮やかな絵が子どもたちの目を引きます。一方で「独占欲」や「共有」のテーマが深く、大人も一緒に考えられるので、家族で読むのにぴったりです。

レビュー

この絵本、めちゃくちゃ心に響きます!森の静けさと大きな黄金のりんご、そこに動物たちの熱い思いがぶつかるさまが、絵も物語もたまらなくドラマチック。特にピアッティの太い輪郭線と鮮やかな赤・青・緑のカラーが、まるで森の生命力を目の前に感じさせてくれます。一方でメッセージはシンプルだけど強烈。「みんなで分かち合う」「真の価値とは?」を問いかける深さがあり、子どもに読み聞かせながら、大人もハッとさせられます。読み終わった後、「共有する喜び」のあたたかさがじんわり残る素敵な一冊です。