『かべのむこうになにがある?』は、ドイツ出身の絵本作家ブリッタ・テッケントラップによる作・絵の絵本。原題は Little Mouse and the Red Wall。2018年にイギリスのLittle Tiger Pressから初版が発行され、日本語版は風木一人さんの訳でBL出版より出版されました。物語は、どこまでも続く赤い壁の中に住む動物たちの中で、ただ一匹、外の世界を知りたいと願う小さなねずみが主人公。恐れや思い込みに縛られず、一歩を踏み出すことの大切さを、やさしい言葉と印象的なビジュアルで描いています。
略歴
ブリッタ・テッケントラップ
ブリッタ・テッケントラップ(Britta Teckentrup)は1970年、ドイツ・ハンブルク生まれの絵本作家・イラストレーター。ロンドンのセント・マーチンズ美術大学で学び、その後約20年間イギリスを拠点に活動。現在はベルリン在住。絵本や児童書、ポスター、広告など多彩な分野で作品を手がけ、世界中で翻訳出版されています。作品は詩的で哲学的なテーマを持ちつつも、やさしい色使いと印象的なグラフィックで子どもたちに親しまれています。代表作には『ツリーハウス』『Moon』『いのちの木』などがあります。
風木 一人(訳)
風木一人(かぜき かずひと)さんは、1968年東京都生まれの絵本作家・翻訳家で、「ホテル暴風雨」のオーナーでもあります。主な作品に『とんでいく』(福音館書店)、『とりがいるよ』(KADOKAWA)、『にっこり にこにこ』(講談社)などがあり、イタリア・フランス・韓国・中国・台湾でも翻訳出版されています。また、絵本創作講座の講師や絵本コンテストの審査員も務めるなど、幅広く活躍されています。
おすすめ対象年齢
この絵本は、6歳〜小学校中学年以上に特におすすめ。シンプルな設定ながら、「疑問を持つこと」「壁を超える勇気」という少し哲学的なメッセージが込められており、親子で読むことで深い対話のきっかけになります。好奇心豊かな子どもにも、大人にもグッと響く心温まるストーリーです。
レビュー
読み終えると、胸の奥がジーンと温かくなるような感覚が残りました。壁に囲まれた世界――それは私たちが自分で作った「安心ゾーン」かもしれない。ねずみの「なにがあるんだろう?」という問いを見て、思わず自分にも問いかけてしまいます。動物たちのさまざまな反応も、私たちの心を映す鏡のよう。ラストで広がる風景の美しさに、「見に行ってよかった」と心から思える作品です。色彩は鮮やかで、赤い壁の印象と、最後に見える空色が鮮烈なコントラストを描き、視覚的にも物語にも深みを与えています。勇気をもらえる濃密な1冊でした。